痔の形態と分類*

  

図による説明、  文章による痔の詳しい解説

 

 「痔」と肛門(皮膚)疾患分類表:(各疾患毎の説明、写真、図へリンク)。

 

*山田クリニックのホームページへリンク


 
                

3大痔疾患の図による説明

1)外痔核。

肛門外側の皮下の静脈叢が突然血栓を形成し、炎症も伴って痛みます。

突然腫れて痛むのでびっくりします。破れて出血することもあります。 しかし一番「たちの良い治る痔」なのです。

2)内痔核。

肛門の中の直腸静脈叢がうっ血し感染腫脹を起こしてできたものです。 痔疾患の50%以上を占めます。 

*1)2)を総称して一般に イ)「いぼ痔」として知られています。

3)裂肛。

乳児裂肛

肛門管が硬い便の排出時に裂けた肛門の傷です。ひりひりと激しく痛みます。

**裂肛は ロ)切れ痔 とも言われます。 *乳児裂肛:裂肛は幼児(女の子)にも発症します。

4)痔瘻。

乳児痔瘻

肛門小窩から感染が起こり、肛門腺が化膿して 「肛門周囲膿瘍」(図参)になり それが慢性化して肛門外に排膿を繰り返すようになると、***(ハ)「痔瘻」になります

乳児痔瘻(幼児(男子)でも痔瘻が起こります)

 

イ)ロ)ハを総称して、3大痔疾患といいます。(上図参照)

その他の

肛門疾患

肛門皮膚疾患

肛門痛   など

*その他の肛門疾患:として

肛門ポリープ」、肛門小窩炎、「直腸膣壁弛緩症

直 腸 脱」、「直腸粘膜脱」、

宿便(便秘/陥頓)」、「肛門皮膚垂」、が肛門周辺疾患として単独発症または、痔と併発したりします。

肛門皮膚疾患として、

肛門部単純ヘルペス」、肛門部帯状疱疹、「肛門カンジダ真菌症」、

肛門周囲皮膚掻痒症」、「肛門尖型コンジロームなどがあります。

他に、「消散性直腸肛門痛」、「直腸粘膜脱症候群」。「陰部神経痛」、「直腸過敏症」などいろいろな疾患があります。

    

 <タイトルに戻る>  <下段の「痔疾患の文章による解説」に進む>   <次のページ「肛門疾患分類表」へ進む>


痔の解説

1)痔(じ)とは何でしょう?

下記の「青い項目」をクリックしてください。

 痔とは、直腸と肛門付近の病気をすべて含めた総称です。痔には、3大痔疾患といって、痔核(いぼ痔) (内痔核、 外痔核) そして切れ痔(裂肛)痔瘻(うみ痔)があります。この、3大疾患で9割をしめます。その内でも、痔核ことに「内痔核は全体の痔の6割」をしめ、残りは、外痔核、裂肛、痔瘻などです。従って、一般に痔といえば、たいてい内痔核を指しています。

イ)痔核(いぼじ)(内痔核)の話:

 

内痔核は、直腸肛門部の静脈のうっ血でおこります。人間が立って歩き、排便や立ち仕事などで、腹圧が過度にかかったりしているうちに「静脈瘤」が形成されて発症するのです。排便時の腹圧は、ななんと、150ー300ミリ水柱圧にもなります。寝ている時の腹圧が10ミリ、立っているときででも50ミリですから、いかに高いかがわかるでしょう。

不規則な排便習慣で、排便時にいきんだり、きばりすぎて、だんだん鬱血(うっけつ)し、直腸の静脈叢が増殖して腫れてきて、内痔核になってしまうようです。この、内痔核の原因となる強い「いきみ」はどのくらい続くものでしょうか?せいぜい4ー5秒が限度です。それ以上いきむと、立った瞬間「くらくら」と立ち眩みがするでしょう。いきむのは、1秒くらいが良いといわれております。ですから、「長い時間いきむくせ」が痔核の原因といわれます。お産のあと内痔核になりやすいのも、腹圧のせいと言われています。

 症状:痔核の症状は「出血」です。赤い血がシュッと飛びちります。直腸粘膜の下に拡張した静脈叢があり、そこから出血するわけです。しかし、神経のないところなので、痛みはあまりありません。また、内痔核が進行すると、出血だけでなく、痔核がだんだん大きくなり、肛門の外に飛び出すようになります。すなわち、内痔核が外へとびだしたり、また戻ったりするようになります。これを「脱肛」といいます。脱肛がひどくなると、排便時や歩いているだけでも、飛び出して、自分の手でもどさないと、痛くなります。脱肛では、残便感に悩まされたりします。

内痔核脱肛患者の10人に1人は手術が必要になります。手術をすれば内痔核脱肛は完治します。


<タイトルに戻る>

ロ)外痔核の話

 痔核でも、肛門の外側に突然できる、外痔核があります。内痔核と違って肛門の外側で目で見えるところが腫れます。ほとんどは、静脈の血栓で、黒豆のようなしこりができるのです。原因は、やはり強い「いきみ」です。そのほか、大酒を飲んだりゴルフの練習で気張りすぎたりした後に突然出現します。

症状:外痔核は内痔核と違って外側の神経のあるところにできますので、激しく痛みます。しかし、この痛みは4ー5日つづくと徐々にやわらぎます。痛みがひどいときは、肛門科にいって、メスで血の固まりを出せば楽になります。外来で簡単に局所麻酔でできます。しかし、外痔核の多くは、坐剤軟膏塗布や温浴などで約1カ月で軽快します。


<タイトルに戻る>

裂肛の話:

 裂肛は、便秘などの硬い便が、肛門を無理に通過することで、肛門管が傷つき、切れたり裂けたりする、いわゆる肛門管の外傷といえるものです。

 症状:肛門管にはたくさん神経があるので、裂肛のある人は、排便時に激痛がおこります。ひどくなると、排便後もずきずきと頭に響くような痛みが長くつづきます。これを「急性裂肛」(初期の切れ痔)といいます。急性裂肛は、とにかく、便をやわらかくして(カマグなど内服)おけば、1週間ほどでなおります。勿論、坐剤軟膏を使用してもよいのです。(野菜、海草、牛乳も便秘に良い)

 裂肛の慢性化!!! しかし、やっかいなことに文明人は忙しいのです。ついつい、会議などで排便感があっても我慢してしまいます。そうして、急性裂肛が何度も繰り返されるようになります。こうなると、「慢性裂肛」となり、肛門管に「潰瘍」ができます。また、潰瘍の付近にはポリープが出来たり、疣(いぼ)(見張り疣)が出来たりします。このような肛門潰瘍ができますと、第3度裂肛状態であり、肛門が狭くなったりすることもあり、難治性で痛みが持続して、もう、なかなか治りません。このようになったら、手術をしたほうが良い場合がおこります。


<タイトルに戻る>

痔瘻の話:

 痔瘻は、肛門と直腸の境にあって、(タイトル図参)分泌物を出している歯状腺が大腸菌などに感染し、化膿することでおこります。中には、歯状腺のうみが、肛門組織内にたまり、腫れが広がって膿瘍をつくるものもあります。これを、「肛門周囲膿瘍」といいます。発熱、肛門の熱感腫脹、疼痛があり、急性症状をしめします。肛門科や外科で切開し膿(うみ)をだすと楽になりますが、これが、痔瘻のはじまりになることが多いのです。

肛門周囲膿瘍後や、または、肛門周囲膿瘍の過程を経ないで、肛門腺の感染が進んで、肛門のまわりや、少し離れたところにぷつんと噴火したおできのようなものができて少し痛んで、膿(うみ)がでてくる状態を「痔瘻」といいます。痔瘻には、いろんな程度があり、比較的浅い痔瘻でもっとも多い(II度)低位筋間痔瘻や、うみが、肛門の奥に入ったり、肛門周囲を奥のほうでぐるっと囲む深い「馬蹄型痔瘻」で、(III度)坐骨直腸窩痔瘻もあります。これは、肛門の外に膿(うみ)がでず、肛門の奥がとても痛み、発熱もあります。こういう時は、とりあえず、肛門科へ行ってください。

尚、痔瘻は昔結核と関係があるといわれていましたが現在は関係ないと思ってよいでしょう。

治療:痔瘻は、切開処置などで、いったん治ったようにみえても、またしばらくするとじくじくと膿が出たり、腫れて痛くなったりして再発を繰り返します。残念ながら、痔瘻は滅多に自然治癒しません。また、坐剤も効果がありません。ほとんどは手術またはそれに準ずる処置が必要です。


<タイトルに戻る>   <次ページ、「痔肛門疾患の分類表」に進む>   <ホームページに戻る>