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びわ湖のヨシ群落の現状


びわ湖のヨシは、昭和28年頃420ha(水中部260ha)あったが、平成3年の調査では130ha(水中部80ha程度)に減少した。 このため、滋賀県では、平成4年にヨシ群落保全条例を制定し、平成13年までに30haの植栽を行い ヨシ群落の再生を目指している。しかし、水深1m以下の生育可能面積は800ha程度あるが、その多くは 直立護岸があったり、底質が岩か泥で、かつ風波が強くヨシの生育に適さない。 既成の群落でも、ハス、スズメノヒエ等他の水生植物の侵食で衰退の著るしいところもある
  炎のファンタジー

西の湖(最大の内湖)のヨシ焼き払い風景
ヨシは冬季に焼くことで翌春芽吹きが良くな
り立派なヨシに成長する

    ヨシ減少の原因 
  
  1 人為的なもの 
                                                                      

(1) 内湖の干拓  戦中、戦後にかけ食糧増産のため内湖の干拓が行われた。昭和15年には37の内湖が存在し、その面積は2,900haであったが、現在は23個所425haに減少している。この内湖にはヨシが繁茂していたが、干拓により大幅に減少した。

(2)埋め立てによる減少 1950年以降385haの埋め立てが行われた。

(3)湖岸堤の建設 琵琶湖総合開発により湖岸堤が建設された。特にヨシが良く繁茂していた南湖では、74%が汀線より湖側に接して建設されたため従来の汀線はわずかしか残らなかった。

  2 生育環境の悪化

(1)自然生態系の変化 遠浅で緩傾斜、入り組んだ地形が常に水位変動、堆積、浸食作用を受け、陸域と水域の2生態系の緊張関係のもとに動的安定が保たれていたが、人工護岸の建設により、この自然生態系が失われた。

(2)河川改修、砂防工事の進展 河川から流入する砂によって遠浅の砂地盤を形成、移動の繰り返しでヨシ帯が形成されやすい状況を作っていたが河川工事、砂防工事の進展により、土砂の流入が激減したため、泥化が進んだ。

(3)琵琶湖総合開発による水位低下と水位調整 水位変動が大きいと普段陸地でも年に数回は冠水し雑草等の繁茂を抑制していたが、+03〜1.5mの水位が調整されていることにより高い部分は完全に陸化し、セイタカアワダチソウ等の陸生植物が繁殖し、ヨシがこれら陸生植物と共生出来ず消滅している      

(4)富栄養化の影響 外来藻であるオオカナダモ、コカナダモ等が異常繁殖し、これがヨシに巻き付き枯死させる。また、切れ藻がヨシ帯にに堆積し湖底がヘドロ状になり、その結果富栄養化を好むハス、マコモ、スズメノヒエがヨシに優先する。(泥の厚さが20pを超えるとヨシは衰退する。)

(5)ゴミの増加 大量のゴミが漂着し、新芽を傷つけ、弱らせる。

(6)湖底砂利の採取、浚渫 ヨシ帯の底部を浸食し流亡、株立ちの原因となっている。

(7)湖岸堤が水の循環を悪くし、泥化を促進している

(8)木本植物の優勢化 ヨシ群落保全条例では、柳も対象となっているが、最近柳が大木化しヨシへの日照を阻害し、その結果日照を好むヨシが衰退している。

どうすれば甦るのか

 基本的には、ヨシ減少の原因で述べた原因を取り除くことであるが、困難なものも多い。しかし、次の対応をすることにより、かなり減少に歯止めがかかるものと考えられる。

1 既存群落の保全
   ●ハス、スズメノヒエ等他の水生植物の侵食から守る。
特に顕著なところ……  烏丸半島の保護地区(ハスの侵食とハスの葉の腐食によるヘドロの堆積が著しく            絶滅の危機に瀕している。                          

 烏丸のヨシ      

                     ハスの異常繁殖により枯死寸前の烏丸半島保護地区のヨシ                                                         
   ● 水草の刈り取り 最近のヨシ衰退の最も大きい原因と考えられるオオカナダモ、コカナダモ等の刈り取りを徹底する。単に航路障害や臭気対策による水草刈り取りでなく、沿岸  生態系の保全、特に、ヨシ群落の保全という立場から積極的に実施する必要がある。
        
   ● 刈り取り、焼き払い、清掃等の維持管理を充実する。 刈り取りに対し、問題視する意見もあるが、ヨシ保全条例施行後実施している刈り取り、焼き払い、清掃の効果は、  単位面積当たりの収量の増加を見ても明らかであり、今後とも積極的に実施すべきである。

  2 ヨシ群落の創生
  (1) 植栽
 滋賀県が策定したヨシ群落保全基本計画によると、平成13年度までに30haを植栽することとされてい
       るが、この進捗率が低い、県の積極的な対応が望まれる。(最近実績に合わせて計画を改定した)                                                                                  
                              
    植栽にあたって、現在までの知見から次の条件を満たす必要がある

1 沿岸生態系に配慮し、出来るだけ従来の自然護岸に近い環境の復元をはかる。底土の入れ替え            を行い、緩やかな勾配を取り冬季の高波に耐え る消波柵を建設する。
        

2 植栽するヨシ苗は、淡海環境保全財団が開発した(特許取得)マット苗がベター。

3 植栽後数年間は、流入する藻等の排除、補植等の維持管理を行うこと。
       
  3 県民のかかわり
ヨシに対する県民の関心がもう一つ、ヨシの植栽、維持管理にボランティアとして積極的な参加が望まれる。

      
  ヨシの活用 
  1 伝統的活用
        ヨシ障子、衝立、屏風すだれ

                ヨシ障子、衝立、屏風                       すだれ

ヨシ葺き屋根

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                                            腐葉土

      

    

                  




   
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