ヨシの造成および維持管理

 造成


琵琶湖のヨシの植栽は漁連等によってかなり古くから実施されていたが、本格的に始まったのは平成4年に滋賀県琵琶湖のヨシ群落の保全に関する条例が制定され、県が琵琶湖のヨシを積極的に保全することとなってからである。条例第9条に基づき制定されたヨシ群落保全基本計画において、平成4年度から平成13年度の10年間に30haの植栽を実施することとなっていた。
しかし、ヨシの植栽はいろいろの事情により平成12年末において計画の約30%に止まっている。
本格的なヨシの植栽は、平成5年度から実施されている。最初は、ヨシの植栽についての知見が少なかったため、試行錯誤の繰りかえしで活着率も低かった。その後挿し木マット苗を開発したことによって大幅に活着率が向上した。

  1 植栽苗
植栽する苗については、2〜3本の茎のついたヨシ株を掘り取り、(堀取り株)植栽していたが、これは完全なる失敗であった。その殆どが活着しなかった。


能登川植栽地
掘り取り株を植栽した能登川地区殆ど活着せず草原となっている


その後、淡海環境保全財団が研究開発した挿し木苗をヤシガラマットに植えたマット苗を植栽することにより、活着率は飛躍的に向上した。

  2 土壌
ヨシは、砂質の土壌を好むといわれているが、琵琶湖の底質は泥化したところが多く客土の必要があったが、砂質土壌にも多くの種類があり良く判らなかっが、砂質壌土での生育が最も良好と思われる。

小野植栽地

山砂を客土し植栽した志賀町の植栽地、堅く締まり過ぎて根が伸びず成長が悪い

  3 波浪
琵琶湖の波浪は、非常に強く消波柵の設置が必要であるが、消波柵のの設置には多額の経費を用することから、比較的波が少ないところを探し植栽していたが、やはり波にやられうまく活着しなかった。消波柵の設置することにより活着率が向上した。

今津植栽地

上記の苗、土壌、消波柵、の条件を略満たし良好な生育を見せる今津町の植栽地

  年度別植栽面積


 年度     
  植栽面積    u
  
生育状況
     備                                           考     
平成4年度
432
 ×  
掘り取り苗を用いたこと 波浪に対する対策不足
平成5年度

10,047
×
掘り取り苗を用いたこと
平成6年度
17,700
掘り取り苗を用いたところは全滅、実生苗を植栽したところは一部活着、挿し木ポット苗は良好な生育
大株の掘り取り苗を用いた場所は、まあまあの生育

平成7年度
6,581
挿し木ポット苗、マット苗の植栽個所は良好、実生苗は不良

平成8年度
6,500
本格的にマット苗の植栽開始 一部を除き生育良好

平成9年度
23,177
一部を除き、概ね良好な生育

平成10年度
19,300
概ね良好な生育

平成11年度
16,540
概ね良好な生育

平成12年度
18,870



    計
119,147




ヨシ植栽位置図
    
植栽苗 
掘り取り苗 自然生えのヨシを茎2〜3本を残し掘り取り植栽する。株が小さく殆ど活着しない。大株にすれば活着率は向上するが、自然生えが大きく減少する。
 実生苗ヨシの穂から採取した種を蒔き育苗するもので、自然生えのヨシ帯を損傷せず大量生産が可能であるが病虫害に弱い。  挿し木苗 ヨシの茎から栄養繁殖するもので、ヨシ帯を損傷せず大量育苗が可能で病虫害にも強い。  ポット苗 挿し木苗をポットに移植し育苗したもの。風波に弱い。  マット苗 挿し木苗をヤシガラマットに植栽育苗したもので、風波に強く活着率が高い。ヤシガラは天然繊維で環境に優しい。最近の植栽は殆どこのマット苗を用いている   維持管理
ヨシは、冬季に刈り取り、焼き払い、清掃をすることにより翌年良好な芽吹きが行われる。これは、刈り取ることによりヨシに刺激を与えることと、 焼き払いによって病虫害を予防することが出来るからである。  また、清掃は廃棄物によってヨシの芽を傷つけないためである。
  年度別刈り取り面積およびゴミの収集量

年度
刈り取り面積
    m
刈取ヨシ束数
      束
ゴミ総量
      m
3
不燃物
      kg
備                            考               
平成5年度
400,000
1,980
1,404
14,980

平成6年度
416,000
3,895
1,556
9,836

平成7年度
504,000
6,676
667
7,662

平成8年度
412,000
9,150
370
4,201

平成9年度
374,000
11,177
335

2,671

平成10年度
356,000
9,872
     404
    3,192

平成11年度

   284,000
    12,323
     282
    2,565

平成12年度
     287,000
    
     
    


  計
3,033,000
55,073
5,018
45,107


平成
5,6年度ゴミの量が多いのは、永年手入れをせずに放置されていたため漂着ゴミや不法投棄ゴミが大量にたまっていた。
 
           
刈り取り地区放置地区
             刈り取り焼き払いを実施した地区             維持管理をしていない地区
この写真は同じ日に隣接した場所を撮影した。維持管理をしていない地区のヨシは、病虫害で赤く枯れている
。
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