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味村敏 著書写真集 私家版
『日本茅屋風土記』
-世界遺産・白川郷・五箇所の合掌造り集落とその周辺-
著・写真:味村敏
編集・発行:味村敏
★特価:8,400円(税込)★
定価:16,800円(本体16,000円+税5%)
315×365・150p
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<著者ごあいさつ>
写真とは!!記録で始まり記録で終わる!!という私の基本的精神から「EXPO‘70吹田万博」を挟んで「国鉄陸蒸汽」そして「茅茸屋根」等をやがては時代の波に押し流され姿を消してゆく日本の原風景と認識し両者を対象として私なりの感性と視点で長年撮影に取り組んで参りました。
昨年12月(95)茅茸民家集落としてアジア地域では初めて〜世界文化遺産〜に正式登録された越中(富山県平村相ノ倉)(上平村菅沼)奥飛騨(岐阜県白川村荻町)とのかかわりは撮影対象を陸蒸汽から茅屋シリーズに移行して5年後の昭和54年(’79)でした。この度、前記三地区が同時に「世界遺産」へとリストアップされた慶びを記念して延べ20年間カメラに収めた記録写真の中から未発表150点を選んで編集し、自主出版写真集〜世界遺産・白川郷、五箇山の合掌造り集落〜とその周辺と題して刊行することに致しました。ここに謹んでご案内申し上げ、ご挨拶させていただきます。平成8年8月吉日 |
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「発刊によせて」 岐阜県大野郡白川村村長・高桑英一氏
民家は、静物ではない。民家には、人の営みがあり、光がある。ゆえに、民家は呼吸しているのである。味村氏の作品には、動きがある。民家の目に見えない香りをとらえ、呼吸を巧みに映し出す術を心得ている。味村氏の写真を見ていると、心が踊る。風景の中に写っていなくても、その中に人の動きを見ることができるからだ。味村氏は、20年近く、わが村に通い続け、合掌集落の風景のみでなく、その中に泰然と存在する民家の息吹き、人の生業を撮ってこられた。氏の作品を通じて、ここに住む私たちの気づかないシーンにたくさん出会うことができる。味村氏がわが村を愛し、愛し続けた結晶としてこの集大成が発刊されることに拍手を送りお祝いのことばとする。
「発刊によせて」 日本写真家協会名誉会員・芳賀日出男氏
写真家は志を立てて、撮影にはいる。その志は生涯変わらない人がいる。私の親しい写真家、味村敏氏(日本写真家協会会員、日本写真芸術学会会員)は、わが国の民家の中でも特に茅茸屋根に着目されて25年間にわたって撮影をしてこられた。撮影地は北海道から南九州におよび、500か所を越えている。味村氏の写真には、風土の季節感が風のように流れてくる。都会の建築というハードウェアーの中に暮らしているものにとって、遠くなつかしいふる里への郷愁がわく。春は花にかこまれ、夏は雄大な白雲の下で、秋はみのりの季節で、そして冬は風雪に耐えて建っている茅茸屋根に、やすらぎと励ましを感じるのである。味村氏がわが国、茅茸屋根の民家の中で、もっとも心血をそそぎ、19年間の歳月をかけて撮影してこられたのは、岐阜県大野都白川村、富山県砺波郡平村、上平村の合掌造りの集落である。
「味村さんの写真」 ミサワホーム総合研究所出版制作室長・佐子武氏
味付さんからは、弊所発行の書籍「住まいの文化誌」シリーズに、毎度写真を提供してもらっている。弊書籍中に、茅葺き屋根が見える美しい日本の風景の写真があったら、それはたいてい味村さんの写真である。味村さんの写真は、世に氾濫する薄っぺらな写真ではない。偶然に撮ったものでも、格好つけて、上手いったらしく撮ったものでもない。味村さんの写真は味村さんの人生である。どの写真も、全国の農山漁村を巡り、その地の空気を吸い、水を飲み、地に伏して寝た者が、己の限で見つけだした光景である。この合掌造の里の写真も、そうした人によって、そのように撮られたものである。ここには美しい合掌の里と、味村というパーソナリティの幸せな出会いによって生まれた静かで充たされた世界が展開している。
「懐かしい日本の原風景」 ペンタックス販売株式会社取締役・嶋田稔氏
味村さんの写真は、国鉄のS Lから始まった。S Lが姿を消すと、茅葺きの民家を撮り始めて現在にいたっている。S
Lから茅葺きへの転身は唐突のようだが実は一つの底流に支えられている。それは、失われてゆく日本の原風景に対する、尽きない慕情だ。味村さんの写真は、見る人の心を懐かしさでいっぱいにする。味村さんは、ペンタックス6×7の愛用者として、私はカメラメーカーの社員として、この機種の発売以来、20数年のお付き合いとなった。6×7を見ていると、味村さんの顔が浮かぶことさえある。今思えば、味村さんのために、6×7を発売したと言っても過言でないように思えてくる。味村さんの撮り続けてきた日本の風景が写真集という形で後世に残り、広く人々の日に触れる。陰ながら応援してきた私にとっても、うれしい限りである。
「文化遺産を黙って見つめてきた人」 日本ユネスコ協会連盟(橋本)会員・書家・後藤加寿恵氏
合掌造り集落が、第19回世界遺産委員会で世界遺産リストに登録されたというニュースが流れたとき、一番先に思い浮かんだのはやはり味村さんの顔だった。永年、茅茸家屋に魅せられ、黙々とその風土を撮り続けて来られた作品が、貴重な記録となって世界に紹介されるときが来たのだと思うと自分のことのように嬉しく思った。世界遺産の指定は、単に建物だけでなく、この雪深い山の中に庶民が生みだし継承してきた文化を、生きたまま丸ごと評価されたものだと思う。味村さんの作品の中で、私が一番好きなのは合掌造り松古家のお嫁入りの写真である。村人みんなのあたたかい心がこの一枚にあふれている。これからも日本人の原風景として、ここに住む人々の誇りと慶びの伝わってくる作品を次々と撮り続けてくれることを期待している。 |
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