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《内藤廣/インナースケープのディテール》
編著:内藤廣建築設計事務所
発行:彰国社
定価:3,570円(本体3,400円+税5%)
A4・136p 4-395-11117-3
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「海の博物館」のあとの内藤廣の代表的な作品とディテールを,「ディテールに宿る風景」のことを名付けた「インナースケープ」という内藤の造語をキーワードにして収録する。
<主な内容>
〔エッセイ〕インナースケープを探して 内藤廣
〔作品〕十日町情報館(1993-1999)
安曇野ちひろ美術館(1993-2001)
牧野富太郎記念館(1994-1999)
最上川ふるさと総合公園センターハウス(2000-2001)
島根県芸術文化センター(2001-2005) |
<内藤廣「インナースケープを探して」より抜粋 >
ディテールに関わることが好きだ。一見バラバラな構成要素である構造や設備,さらには表面を覆う意匠も,ディテールの在り方次第で整えられ,空間の中に共存することが出来る。その在り方によって,すべてを空間につなぎ合わせることが出来る。ディテールは建築における魔法の杖のようなものだ。
建築とは,人間が暮らす空間が周囲の環境に対して如何に対峙し共存し得るか,その形式のことだ。だから,考え抜かれたディテールには,その建物が建つ場所の周囲に広がる風景が映り込んでいるはずだ。地面の状態や地震,風の向き,台風,激しい雨,雪,光,そうしたその場所を構成する要素と要求される内部空間との均衡がディテールとなる。それらに対する洞察が足りなければ,異物である建物はその場所と共存できない。長い時間存在していくことが出来ない。
神なき時代の細部に風景を宿らせたい。建築を風景と素材の中間におくこと。それらの間の果てしない往還によって,新しい時代の新しい細部を作りたい。わたしにとってディテールを設計することは,建築の細部に現れようとしている風景そのものの姿を描くことに他ならない。そして,このディテールに宿る風景のことをインナースケープと呼ぶことにしたい。 |
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