17世紀にパリで刊行されたル・ミュエの建築書は、都市空間の構成要素としての一般住宅家屋の重要性に着目し、現実に即してその合理的な建築形態を追求した先駆的な作品である。その内容は現代の都市計画や住宅建築が抱える課題に対しても大きな示唆を与え、その先駆性は作品の資料的価値を高めている。
ル・ミュエの書がこれまでわが国においてあまり知られていなかった理由は、都市の一般住宅家屋の建築形態という主題が長く建築史的研究や都市計画研究の狭間に置かれてきたことにあるのみでなく、それが現代フランス語と多少表記法の異なる17世紀フランス語で書かれていることにもあると考えられる。
本書の刊行はこのル・ミュエの書をわが国に紹介し、都市の住宅建築の一つの現実的モデルを示すと同時に、17世紀フランスの都市と建築に関する認識を深める新たな材料を提示することを目的とする。
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