【外出中に遭遇した出来事に思うこと
                                           荒木正幸
 外出すると「ここ、何とかならへんのかな・・・」と思うことがある京都タワーの画像
具体的に言うなら、エレベーターに関連しての問題が多い。肝 な場所に設置されていなかったり、たくさんの回り道をしないことには使えなかったり、街中を出歩くと多くの矛盾する光景を目にしてしまう。最近はバリアフリーの考え方に注目が集まり多くの場所でエレベーターが設置されて、車椅子での移動がずいぶん便利な世の中になっていることを実感している。でも中には、場所を考えて工夫した設置をしていたなら、もっと使い勝手良く出来るのにと、不満に思わずにいられないケースもある。
 某駅では、従来は地下ホームから地上に出るために、階段昇降機と、駅に隣接する某デパートのエレベーターを使わなければならなかった。昨年秋、この駅にも待望のエレベーターが完成し「これでこの駅も便利になるな」と思っていたら、意外なことが原因となり、もったいない設備となっていた。地下ホームから改札階には何の問題もないが、改札階から地上に出るのにずいぶんな待ち時間が発生していた。実はこのエレベーターは新築された8階建ての商業ビルのすべての階に通じており、地下駅の改札前にも通じる構造であった。エレベーターの上階は、それぞれにお客様の出入が多い人気店舗が揃っているためか、なかなか下に降りて来てくれない。
特に地上階である1階からエレベーターを利用するためには、ある程度の忍耐が必要になる。上階に行く者と地下の駅に行く者とが重なってしまうため、車椅子で乗り込むスペースも確保しにくくなっていた。「車椅子で利用するので降りて下さい」などと他のお客様に言うわけには行かないので、乗り込める状態でエレベーターが来るまで、しばらく待つしかない。ただ駅を利用したいというだけで、こんな待ち時間が生まれるのではダイヤ通りに動いている公共交通を利用するためのエレベーターなのに、全く意味がない状態になっている。駅は駅、商業ビルは商業ビルと、ビルの設計の段階から分別して建設するべきところである。
 某デパートではこんなこともあった。そのデパートには全部で9基のエレベーターがあり、そのうち2基が「車椅子とベビーカー専用」になっている。本来ならばこれだけの設備があれば、何の問題もないはずだが、困ったことが起きてしまっていた。その日は秋の観光シーズンの真っ只中!ただでさえ人の多い時期、そのデパートでは上階で複数のイベントが開かれ、店内は混雑している様子だった。私はそのイベントとは無関係に、上階へ行こうと専用エレベーターを待っていたが、扉が開くと数台のベビーカーが見え、降りる様子がないので見送るしかなかった。しばらく待った後に扉が開くが、今度もベビーカーと車椅子が見えたので仕方なく見送った。もうさすがに次は乗り込めるだろうと思っていると、今度は一般用のエレベーターに乗り切れなかった健常者の方が多数乗り込んでいて、本来は「専用」とされているエレベーターを使えなかった。もう待てない!とインフォメーションへ行き、事情を説明することでようやくエレベーターで起きている矛盾を、店員側に理解していただけた。その後さらに2度も待たされたが、各階に係員が配置されたとかで割り込んで乗り込むお客様を止めることが出来たようだった。帰る時にも、来た時と同じくらい混雑していたが、さすがに係員が立った効果は絶大だったらしく、待たされて乗り込めないという事態だけは避けられた。誰か見ていないと、人は我先にという気持ちになってしまうのかも知れない。でも、あの「車椅子とベビーカー専用」という看板表示、みんな知っていると思うのだが、あれだけ目立つ表示をしてあるものが見えないはずはない。それなのに階段で行けるはずの人々で満杯になるエレベーター。世間のモラルは果たしてどこへ消えてしまったのだろう。そんな想いで帰り道は悲しくさえ思った。

 エレベーターの利用価値と、世間の人々が持ち合わせている社会的モラル。身障者マーク
さまざまな矛盾と不条理に左右されながらも、全国各地で今日もエレベーターが稼動している。その中で、障害者やお年寄りの方、またケガや病気等で車椅子を使用する人々が、エレベーターが使いたくとも使えずに困っているケースは、どのぐらいの数になるのだろうか。世の中の誰もが困ることのないバリアフリーを期待している。

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