アートル・メラン
議会軍(正規軍)の新型アルマ・ヴィオ。ということは反乱軍の一部でももちろん使用しており、黒の貴公子ミシュアスの愛機として有名(?)である。伝説上の幻獣ヒポグリフ(※補説)の姿をモデルにしている。飛行型アルマ・ヴィオに迫る速さで飛ぶことができ、2門のマギオ・スクロープを装備、鋭い爪を備えているので接近戦にも強い。さらに人型にも変形(!)し、この形態時にはMTソードやシールド等を使うことも可能。イリュシオーネの現在の技術によって生み出されたアルマ・ヴィオの中ではトップクラスの性能を誇る。
実は、あのエレイン・コーサイスもこれを使っていたりする。ちょっと意外だ。エレイン機を除いては、なぜか議会軍の機体として登場したことがほとんどないので、アートル・メランといえば反乱軍のアルマ・ヴィオだというイメージがある(苦笑)。赤と黒という色も悪役っぽいので、余計にそう思えるのかも?
ちなみにミシュアス専用機は「アートル・メラン・マギウス」という魔法戦に対応した特殊なタイプ(→マギウスタイプ)で、基本性能は普通のアートル・メランよりも格段に高く、武装の種類も異なる。厳密に言えば、ハイパー化させたアートル・メラン(=ハイパー・アートル・メラン?)をさらに魔法戦仕様にしたものだと考えるのが正しいかもしれない。
※補説: ヒポグリフがどんなモンスターなのかについては、小説やゲームの中でも諸説ある。個人的に面白いと思っているのは、グリフォン(獅子の体に鷲の頭と翼を持つ魔獣)の雄とペガサスの雌から生まれたハーフだという説。大方の場合、ヒポグリフもグリフォンと同様に鷲の頭と翼を持つが、身体は馬に近いというのが、ファンタジー世界では一般的(?)らしい。だが私がヒポグリフを描く場合、通例として、その体の前足や胸の辺りは獅子(ココが私の勝手な創作^^;)で、その他の胴体部分は馬ということに決めている(獅子の前足の攻撃力と馬の後足の脚力を兼ね備えている)。だからアートル・メランの前足(人型形態の場合には「腕」)には、敵を引き裂く強力な爪があるのだ。
青い月
イリュシオーネには2つの月が存在する。「現世の月」と呼ばれるという黄色い「セレス」と、「この世ならぬ世界を象徴する月」とされる青い「ルーノ」である。普段の晩に出ているのは黄色い月セレスで、青い月ルーノは希にしか出ない。この世界の人々の間では、青い月の夜には魔物や妖精がうろつくと信じられており、それゆえルーヌは別名「歓迎されない月」などと呼ばれ、忌み嫌われている。またルーノはセレスに比べて光が微弱なため、青い月の晩は闇夜に近い状態となるらしい。それゆえ「闇の月」という異名も持つ。普通はセレスとルーノのいずれか一方しか見ることができないのだが、2つの月が同時に出ることも実はあり――その特別な現象が起こるのは、実は今年だったりする。
注意: 以下の説明は、第27話以降を読まれていない方にとっては、ネタバレになる可能性が高いです。
青い月ルーノは、古くは「ルーヌ」と呼ばれており、さらにこの名前の起源は「月」を意味する旧世界の言葉(=古典語)「リューヌ」にあるという。そう、あのリューヌと同じだ!! ルキアンが言っていたように、リューヌは「闇の月の名前をもつパラディーヴァ」なのである。気づいておられる方も少なくないだろうが、本編の中でも、全体として「月」に関わるイメージが色々なところに出てきている。さらにいえば、アルフェリオンの機体の色である「銀」というのは、我々の世界でも古くから言われている通り、月の魔力を象徴する金属である(厳密には、アルフェリオンは白銀色だが)。またルキアンが崇拝する魔法神セラスも、月の女神に他ならない。ちなみにギリシア神話の月の女神アルテミスは銀の弓を持っている。前述のごとく銀は月を象徴する金属であり、同時にアルテミスの支配に属する金属なのだと言われる(なお、金はアポロン=太陽)。……と考えれば、いかにこの物語の中で「月」が重要か分かるというもの。セラス−リューヌ−アルフェリオンというラインが「月」という象徴によってつながるのは、偶然だろうか? でもアルフェリオンの本当の色は、銀ではなく「あの色」だったりする。この違いは一体何を意味する!?
青紫のクラヴァット
エクター・ギルドの正式なメンバーの印。クレドールの面々もこれを首に巻いている。クラヴァットとは今日のネクタイの原型となったもので、スカーフに似た衿飾りである(大体、17世紀半ば〜19世紀半ば頃まで)。
アクス
エクター・ギルドの飛空艦のひとつ。いわゆる「制空艦(中型〜やや小型)」と呼ばれるタイプの飛空艦で、マギオ・トルピーダ(呪文魚雷)をはじめとする強力な火力と高い機動性を生かし、主に対艦戦闘や味方飛空艦の護衛などを任務とする。クレドールやミンストラのような戦闘母艦ではないため、アルマ・ヴィオは搭載されていない。なお艦長は海賊あがりのバーラー、副長は某都市国家出身の貴族で画家(?)のディガ・ラーナウという、何だか変わった組み合わせ。
アシュボルの谷
アレスが住んでいたところ。ラプルス山脈にある無数の谷のひとつで、自然がいっぱい(笑)。なお、谷と言っても狭い谷川のイメージではない。大昔、氷河に削られて山の裾野にできた、比較的広々とした草原のような場所。環境は抜群だが、近くに大きな街など存在しないので、不便とはいえば不便……。
アストランサー計画
旧世界における解放戦争の際に、地上界の反撃によって窮地に立たされた天上界
が、起死回生を狙って実施した計画。科学と儀式魔術とを取り混ぜた特殊な技術によって人体を改造し、一種の超生体兵器を生み出すことを目標としていたことは判明しているが、詳細は謎のままである。クレドールの面々がパラミシオンの遺跡で発見した旧世界の記録によれば、アストランサー計画のために、戦慄すべき人体実験が行われていたことが明らかとなっている。どうやら、人間の身体をもとに「魔物」を生み出すことが研究されていたらしいのだが……。なお、この人体実験に反対したために、エインザール博士が天空人から反逆者のレッテルを貼られた、ということも記憶しておくべきであろう。
アトレイオス
クレドールのエクター、バーンが操るアルマ・ヴィオ。青い鎧に身を包んだ騎士の姿、ということは汎用型(人型)である。もともとオリジナルの機体ではなく、議会軍のゾーディーに度重なる改造を施して生み出されたもの。装甲が厚めのわりには動きが比較的機敏、かつ手持ち武器としてMTジャベリンの他にMTソードも装備しているので格闘戦には強い。なんだかバーンの性格にぴったり? 反面、頑丈な装甲と素早い動きとを両立させるため、必然的に別な点での軽量化を迫られた結果、中射程・長射程の武装がかなり貧弱である。そのため相手や場所によっては戦い方が難しい。バーンは根性と気合いでそれを補っているのだろうか? いや、機体に搭載されている火器がお粗末でも、手にMgS・ドラグーン(小銃型のマギオ・スクロープ)を持てば良いのでは?と、通な読者様は考えるかもしれない。しかしMgS・ドラグーンを使うためには、エルムス・アルビオレやカヴァリアンのように予めそれに対応した高度な内部構造が要求される。結局のところ、旧式のゾーディーをベースとしてるアトレイオスには、到底装備できる武器ではないのだった(悲)。仕方がないので、アトレイオスの飛び道具としては、マギオ・グレネードという一種の手投げ弾(?)がある。バーン、頑張って投げてくれ!
「あの存在」 (注意: 第29話以降を読まれていない方にとっては、重大なネタバレになります)
常にそう呼ばれる何か。今のところ、パラディーヴァたち以外の登場人物が、「あの存在」について話したことは一度もない。おそらく現世界に生まれた者で「あの存在」のことを知っているのは、アマリアだけであろう。しかし彼女も、単に「あの存在」という単語を耳にしただけにすぎない。パラディーヴァの中でも詳しいことを知っているのは、多分フォリオムだけ、あるいは彼とリューヌだけかもしれない。
全ては謎に包まれたままだが、これまでに出てきた断片的な情報によれば――エインザール博士は「あの存在」のことについて、漠然と、あくまで漠然としたレベルで気づいており、それが「本当の敵」であるとも考えていたらしい。またフォリオムによれば、「あの存在」は旧世界の行く末を左右するほどの力をもっていたといい、アムニスによれば、人間の運命を自在に変えることさえできる超越的な存在だともいう。人間が「あの存在」に対抗することなど不可能だと考えられているが、唯一、「ノクティルカの鍵」の謎を解くことができれば、可能性もなくはないとフォリオムは言う……。
アムスブール基地
議会軍の総司令部のある基地。王都エルハインの南、正確には都のやや南東、中央平原の最北端に当たる地域に位置する。元々アムスブールは交通の要衝であり、古くからこの地には、エルハインとミトーニアとを結ぶ「王の道」を押さえるための城が建てられていた。あのマクスロウ少将が、軍の最高司令官ドラード元帥と会談していたのもこの基地だ。
『新たな共和国について』
ランディが思想家として名を知られるきっかけになった本。この著書が出版される以前には、彼の執筆活動は、大貴族の放蕩息子の暇つぶしにすぎないものだという程度の評価しか、世間的には受けていなかったらしい。同書の内容は、旧タロス王国で起こった革命の成果を思想的に肯定し、やや急進的なまでに賛美するものだとか。そのため各国当局の禁書目録に入っているともいう。ただし、ランディはこの著作を今ではあまり気に入っていない様子……実際、第1巻が出たのみで、第2巻は長年にわたって書かれないままになっている。
知識層の中には、ルキアンのようにランディの作品から一定の感銘を受けた者も多い(やはり過激にすぎるとは思っているようだが)。しかしクレドールのクルーだけをとってみても、中には革命時に家族を殺されたり国を追われたりして、今でも革命に疑問や反感を持っている人が少なくない。そのためランディも遠慮しているのかもしれない。メイに至っては露骨に反革命貴族(?)と言えるかもしれないし、彼女と同じ境遇のシソーラも、タロスの革命を肯定しているわけがない。艦長のカルダインに至っては、ゼファイア王国を守るためにタロス革命軍と戦った人――何しろ「ゼファイアの英雄」と呼ばれる人である。彼の奮戦にもかかわらず、結局、ゼファイアは革命のどさくさに紛れてタロス共和国に力ずくで併合され、消滅してしまった。その恨みは今も……?
アラノス
議会軍が新開発した飛行型アルマ・ヴィオ。ただし、オルネイスに替わる次期主力機として設計されたわけではないと思われる。むしろエリート部隊用の高性能機という位置づけであろう。外見的には、オルネイスよりもさらに実際の鳥に近い姿をしている。旧来の飛行型に比べて、圧倒的なスピードを誇る。あのクロワでさえ地上から撃墜するのは困難だと言っているのだから、いかに速いか想像しうるというものだ。正直、陸戦型や汎用型にとっては遭遇したくない相手である。大きめに作られた両足の鉤爪は、地上の敵を急襲する場合だけでなく、飛行型同士の格闘戦においても恐るべき力を発揮する。以前に反乱軍のアラノスがカリオスのキマイロスに敗れてしまったが、あれはアラノスが弱いわけではなく、キマイロスが強すぎたため。むしろアラノスは、キマイロスの攻撃を至近距離でかわせるほどの旋回性能をもっていたのだから、その高いポテンシャルをもっと評価したいところ……。
アラム川
オーリウム王国で2番目の大河。ただし1番のヴェダン川は、オーリウム、ガノリス、ミルファーンの3国にまたがる国際河川であるため、厳密にオーリウム国内の川という意味では、アラムが最大・最長である。アラム川は、イゼール森の背後にそびえる山脈に源を発し、この広大な樹海を抜け、東部丘陵に沿って流れた後、やがて海へと至る。川の中流域には、エクター・ギルドの本拠地であるネレイの街があり、巨大な内陸港も作られている。
アルファ・アポリオン (注意: 第29話以降を読まれていない方にとっては、重大なネタバレになります)
旧世界の時代、エインザール博士が開発し、自らエクターとして操っていた機体。要するにアルフェリオン(→アルフェリオン(オリジナル))の本来の姿である。物語の中では「空の巨人」、「雲の巨人」、「紅蓮の闇の翼」、「エインザールの赤いアルマ・ヴィオ」といった、様々な名称で呼ばれている。まだ実際には登場していないが、諸々の史料やルキアンの見た幻などを総合すれば、全身が真っ赤で手に巨大な鎌を持ち、燃え盛る炎の翼を背負った人型のアルマ・ヴィオらしい。その想像を絶する力は、たった一体で天空植民市を滅ぼすことができるほど。解放戦争の際、天空人たちはエインザール博士に反逆者の汚名を着せ、地上界へと追いやってしまったが――その結果、アルファ・アポリオンが地上軍に加わるという事態を招き、天上界の敗北につながったといっても過言ではない。
アルフェリオンは様々な形態に変形できるのだが、アルファ・アポリオンもそのひとつの姿なのだろうか? 「紅蓮の闇の翼」ことアルファ・アポリオンが目覚めたとき、「終末」を告げる門が開かれるのだと 『沈黙の詩』には記されている。もしこれが復活するとき、現世界も旧世界と同様に終わりを迎えるのか!? このような危険性を知ったルキアンは、決して「紅蓮の闇の翼」を呼び覚まさないと誓った。だが「絶対に外れない」というアマリアの予言によれば、いずれルキアンは、自らの意思でアルファ・アポリオンを覚醒させることになるのだと……。
アルフェリオン(オリジナル)
カルバがオーリウム辺境で発掘した、旧世界のアルマ・ヴィオ。正確にどのあたりで発見されたのかということは本編中にまだ出てこないが、オーリウムの辺境と言えば、一般に東部丘陵のことを指す。ただし人跡未踏の地という意味に解せば、イゼール森の奥地という見方も可能。このオリジナルタイプは、かなり損傷が激しかったためか、そのまま修理して使われるには至らなかった。カルバは、「生きていた」器官を、現在の技術で作られた2体のアルマ・ヴィオに移植したのである。それがドゥーオ(→アルフェリオン・ドゥーオ)とノヴィーア(→アルフェリオン・ノヴィーア)だ。しかし、これは憶測にすぎないが……アルフェリオンに採用されていた技術があまりに恐るべきものであったために、わざと2体に分けたとも考えられる。つまりどちらか1体が悪用されでもしたときに、もう1体がそれに対抗する手段になるよう……。ちなみに外見からすれば、ノヴィーアの方がオリジナルに近い。
アルフェリオン・ドゥーオ
旧世界のアルマ・ヴィオ「アルフェリオン」(→アルフェリオン(オリジナル))の残骸を再利用して作られた機体の一方。コウモリを思わせる巨大な翼と、竜と騎士が掛け合わされたような漆黒の体を持つ。汎用型なのに飛行速度はとてつもなく速い。なんだか邪悪な感じのデザイン(?!)だったためか、ルキアンはドゥーオがどうも好きになれなかった。活躍する間もなく、第1話でいきなり何者かに奪われてしまう。この事件がなければ、ルキアンが戦争に巻き込まれることもなかったかもしれないのに……。それでも、やはりアルフェリオンを2体作っておいて正解だったかもしれない。
アルフェリオン・ノヴィーア
オリジナル・アルフェリオン(→アルフェリオン(オリジナル))から作られたもう一方の機体で、翼を持った騎士というデザイン。白銀色に光る外装で覆われている。われらが主人公、ルキアン・ディ・シーマーの愛機だ。彼にしてみれば、不本意ながら操ることになってしまった……というべきかもしれないにせよ。ドゥーオ(→アルフェリオン・ドゥーオ)と同じく、「ステリア」という失われた超テクノロジーの流れをくんでいるため、その性能は現在のアルマ・ヴィオとは比較にならないほど高い。第3話で実力の一端が明らかになったが、飛空戦艦2隻を一瞬で沈めてしまう力にはやはり恐ろしいものがある。あれでも加減していたらしいから、本当の力はいかなるものやら……。武装は、まず一般的なものとして、肩部の長射程マギオ・スクロープ1門(飛空戦艦の主砲並の威力を持つ)と、左腕に内蔵されたマギオ・スクロープが1門、接近戦用にMTランサーとMTシールドを持つ。特殊兵器として、次元障壁のほか、ひょっとすると魔法戦用のランブリウスとネビュラも搭載しているかもしれない。ステリア系作動時に加わる武装は、ステリア・ソード(剣というよりは長大な光の帯。第3話で使ったアレ)と、超高出力の拠点破壊兵器ステリアン・グローバー、等色々あるらしい。
アルマ・ヴィオ
モビル・スーツを語らずしてガンダムが語れないように(笑)、アルマ・ヴィオなくしてアルフェリオンは成り立たない。アルマ・ヴィオとは、イリュシオーネの言葉で「生ける鎧」という意味。ひとことで言えば大型の生体兵器である。「ロボット」ではなく生きているのだ。ただしアルマ・ヴィオそれ自体だけでは、肉体のみ存在する仮死状態に等しく、動くことも考えることもできない。繰士(エクター)の魂(あるいはアストラル体か?)を一時的に離脱させ、自らの中に取り入れることによって、アルマ・ヴィオは初めて生き物として活動することができようになる。乗り手と機体の区別はここで曖昧になり、いわば両者が融合するところにアルマ・ヴィオの特徴がある。アルマ・ヴィオは、飛空艦とならんで旧世界の魔法科学で作られた兵器であり、もともと現在のイリュシオーネの技術水準で作れるものではあり得なかった。が、何世代にもわたって、遺跡や大地の下から発掘し、原理も構造も分からないまま経験と憶測だけで使用・改造してきた結果――現段階では、旧世界よりはるかに低い水準ではあれ、なんとか自前でのアルマ・ヴィオ製造も可能になっている。しかしこんな調子だから、他の分野にアルマ・ヴィオの技術を転用することは到底不可能。アルマ・ヴィオそのものを民生用に使うことは、一応行われているようだが。
イーヴァ
カセリナの乗るアルマ・ヴィオ。アルフェリオン(→アルフェリオン(オリジナル))と同じく旧世界の機体であるため、ずば抜けて高性能。いや、旧世界の機体の中でさえ、アルフェリオンやサイコ・イグニールとともに一二を争う実力を秘めているかもしれない。人型(汎用型)で、鎧を着た若い女性の姿を模して作られている。カセリナお嬢様にお似合いの(笑)、とても優美なアルマ・ヴィオだ。通常の武装の他に、魔法戦用のネビュラを備え、さらには次元障壁など旧世界独特の超兵器も取り入れている。汎用型であるにもかかわらず、地上での動きが非常に速い。その俊敏な動作とカセリナの優れた剣技により、手にしたMTサーベルで敵の弱点をひと突きににする。以上のことからも想像できるように、地上での接近戦において能力を最大限に発揮できる機体だと思われる。イーヴァの飛行能力については未知数だが、カヴァリアンとの空中戦の際、自ら飛行するのではなくディノプトラスの上に乗っていたことからして、基本的には飛ぶのは苦手なのかもしれない(?)。
イグニール
ドラゴンの姿をした旧世界の魔獣型アルマ・ヴィオ。このイグニールを大幅に改良し、サイキック・コア・システムを搭載したものが、アレス(+イリス)の乗るサイコ・イグニールである。普通のイグニールは、本編の中にはまだ登場していない。いや、ずっと登場しないかもしれない?(苦笑)。ということで、その実態も不明。一応、ただのイグニールも旧世界の機体なので(しかも旧世界末期、アルマ・ヴィオの開発が頂点に達した頃に登場したということで)高性能には違いなかろうが、サイコ・イグニールと比べると格段に落ちるのは言うまでもないだろう。
イゼール森
オーリウム王国のちょうど真ん中あたりから東部・北東部にかけて、鬱蒼とした原生林の広がる樹海。王国中部を横切って東西、南北に陸路で移動する場合には、この森を迂回しなければならないことが多く、必要以上の時間がかかる。イゼールの周辺には多くの街や村があり、そこでは人々が森からの豊かな恵みを受けて暮らしている。しかし、この昼なお暗き森林地帯には現在も様々な魔物が生き残っているので、あまり奥まで足を踏み入れるのは危険である。樹海の面積はイリュシオーネの平均的な国ひとつよりもはるかに大きいため、もし中で迷ってしまった場合には、戻ってこれなくなることも珍しくない。森の中心部に達した者はほとんどいないと言われるが、その辺りでは今でも妖精たちの姿を見かけることがあるという。このように人の寄りつき難いイゼール森であるにもかかわらず、何故か樹海の中には旧世界の遺跡が数多く存在している。ちなみにクレドールがネレイのギルド本部から中央平原に向かうとき、「魔の山」ことパルジナス山脈の上空を飛ぶという危険を避けるため、アラム川に沿ってイゼール森南部を通過した。
物語の舞台となる異世界のこと。この名前は、古代イリュシオーネ語の「幻影」という言葉に由来すると言われている。イリュシオーネ全体は、複雑に入り組む2つの独立した世界から成り立っている。ひとつは人間たちの住む、現実界ファイノーミア。通常、人々が生活し、目に見えた形で関わっているのはこのファイノーミアである。もうひとつは、妖精や魔物たちの住む、夢影界パラミシオンである。こちらは一種の異空間であり、通常では入ることはおろか、人間の感覚をもって知覚すること自体できない。ただしこの2つの空間は互いに接しているので、特定の条件下においては、偶然に行き来することも可能になる(第4話でクレドールがパラミシオンに入り込んでしまったように)。一般に、ファイノーミアの中でも、高山や深い森の中、あるいは空の上や海の真ん中など、大自然のエネルギーが非常に強い場所では空間の歪みが生じ、パラミシオンとの境界が曖昧になっていることが少なくない。なお、狭い意味でイリュシオーネと言った場合、ファイノーミアだけのことをさす。最狭義には、人間たちが実際に生活圏としている、この世界唯一の大陸のことをいう。
イリュシオーネの文化水準は、単純には比較できないが、おおむね私たちの世界の18世紀末〜19世紀前期のヨーロッパのそれと同程度だと見てよいだろう。社会構造や生活様式なども似ている点が多い。ただしアルマ・ヴィオや飛空艦に代表される、旧世界の遺産については全く話は別だが。なお、イリュシオーネ(大陸)の諸国家や歴史については、それぞれの項目の他、「すぺしゃる」のコーナーのAlphelion 前史も参照されたい。
ヴィエルゴ
旧世界の時代に天上界を形成していた天空植民市のひとつ。解放戦争の末期、ヴィエルゴを筆頭とするいくつかの天空植民市は、天上界の中央政府に対して独立を宣言、地上界とも独自に講和を結んでいる。このように天上界内部の統一が崩れたことも、地上界にとって有利に働いたと思われる。記録によれば、事実上、ヴィエルゴは「教会」と呼ばれる組織に掌握されていたという。エインザール博士に膨大な資金提供をしていたのも、この「教会」だと言われている。おそらくヴィエルゴとその同盟市は、地上軍の攻撃を一度も受けていない。にもかかわらず、天上界全体が滅亡したということは、極めて不可解である……。
ヴェダン川
イリュシオーネ大陸で有数の大河。源泉はミルファーン王国にある。ラプルス山脈の北からオーリウム王国内に入り、同国とガノリス王国の国境を延々と流れた後、レマール海に注ぎ込む。ヴェダン川は幅が広いうえに全般的に水深があり、騎兵や歩兵は勿論、陸戦型アルマ・ヴィオによる渡河も困難である。また河口部にも湿原地帯が広がり、行軍は難しい。そのためオーリウムにとって、ヴェダン川は軍事大国ガノリスに対する天然の「堀」として重要な役割を果たしている。だが例外的にヴェダン川が浅くなっている地域もあり、従来、ガノリス軍がオーリウムに侵攻する際には、ほとんどこの浅瀬地帯を通っているようだ。それゆえ現在では、浅瀬に沿って、オーリウム王国の強固な要塞線が築かれている。これが、いわゆる「レンゲイルの壁」に他ならない。
エインザールの赤いアルマ・ヴィオ
旧世界の時代にエインザール博士が開発し、自らエクターとなって操ったアルマ・ヴィオ。その恐るべき戦闘力ゆえに、「紅蓮の闇の翼」と恐れられた。博士がアストランサー計画に反対して天上界を追われて以来、このアルマ・ヴィオは地上界を助けて戦うことになる。「大地の巨人」ことパルサス・オメガに続き、絶大な力をもつ赤いアルマ・ヴィオまでもが地上軍に加わった結果、天空軍は次々と敗走を重ね、戦局は一気に地上軍有利に傾いた。天上界が敗北する原因となった2体のアルマ・ヴィオが、いずれも同胞であるはずの天空人の作った機体であるというのは、なんとも皮肉なことだ。
エクター
要するにアルマ・ヴィオのパイロットのこと。同義語として「繰士(そうし)」とも呼ばれる。エクターがアルマ・ヴィオのケーラ(≒コックピット)に乗り込むと、その身体は、青く透き通った水晶体(?)の中に一瞬にして封じ込められる。この水晶体は、恐らく旧世界のクリスタル・スリープと同様の技術を用いていると思われる。同時にエクターの魂(仙術の「魂魄」に近い意味合いか? あるいはアストラル体だという説もある)は肉体から一時的に離脱させられ、魂を持たないアルマ・ヴィオの中に入り込む。これによってアルマ・ヴィオはエクターの魂と融合し、初めてひとつの生命体として活動することができるようになる。またエクターの心の力を、すなわちパンタシアを一種の触媒としなければ、アルマ・ヴィオは自然界に漂う霊気をエネルギーとして使うことができない。その意味においては、エクターは操縦者であると同時に、アルマ・ヴィオの一部――敢えて言えば生体パーツでもあるという表現もできよう。
エクター・ギルド
元々はオーリウム王国のエクターの同業組合だが、現在は正規軍ですら一目置く巨大傭兵組織にまで成長している。ギルドに所属するのはフリーの(?)エクターのみであり、特定の誰かに臣従している者(諸侯の家臣その他。例えばナッソス家の四人衆など)や軍のエクターは、ギルドに属していない(ギルドの規則により、メンバーになることができない)。勿論、在野のエクター全てがギルドに属しているわけでもない。
ギルドの組織は比較的単純である。ネレイの街にある本部を中心に、王国各地に支部が存在する。各支部は会員とその代表者(=ギルド・マスター)から構成されており、会員の地位は全て平等。会員は自分たちの中からギルド・マスターを選出する。それぞれの支部は基本的に独立しているが、ギルド全体に関わる重要事項については、本部で開かれる総会が決定する。本部にはギルドの最高責任者として、グランド・マスター(各支部のマスターたちの互選によって選出)が置かれている。ちなみに現在のグランド・マスターは、デュガイス・ワトー氏。情報収集や物資の補給などの点で各支部をサポートするのも、本部の役割である。そのために必要な資金は、全ての支部が負担する拠出金によって賄われる。また本部はネレイの内陸港に飛空艦隊を保有している。これらの飛空艦は、個々のギルド会員の力だけでは手に負えない大がかりな仕事の際に、支部からの依頼に応じて支援に向かう。ちなみに飛空艦は、1隻でひとつの支部とみなされる(理屈の上では、全会員からの委託に基づき船の維持・運営を代行する支部という意味合い)。例えばクレドールは、カルダイン艦長をマスターとする独自の支部だということになる。
エクター・ギルドの最も重要な役割は、構成員のための「仕事」を請け負うことである。例えば建物の警備、商船の護衛、貴重品の輸送、財宝の探索等々。以上は私的な依頼だが、公的な仕事も――王家や王国議会、各地の領主などから、犯罪者の捕縛や海賊の討伐などを任されることも多い(エクターは傭兵であると同時に賞金稼ぎでもある)。具体的には、各支部が依頼主から仕事を引き受け、その仕事を支部所属の会員たちに斡旋する。報酬の受け渡しの際も支部が仲介をするので、依頼主にとってもエクターにとっても互いに安心(?)である。また、ギルドのエクターは自分たちの規則を守って行動し、仕事に関わる秘密を外部に漏らすこともなく(ましてや、その秘密をネタに依頼主を「ゆする」ことなどもない)、組織的なバックアップのおかげで仕事の成功率も上々であるため、依頼主の側からすれば、ギルドに属するエクターは一般に信用度が高いということになっている。
代々の国王の特許状により、エクター・ギルドは、「一定の要件」のもとで王国内における武力行使を許可されている。しかしこの要件の中身は非常に曖昧であって、王家や王国議会に対する反逆、一般住民に対する略奪行為、外国に対する私戦等々以外であれば、大抵の戦闘は黙認されているらしい(とんでもない話だ)。何故にそんな途方もないことが許されているのかといえば――当局の側にも、ギルドの武力を上手く利用して国内の治安維持を補完している面があるからだ。オーリウム王家の力は弱く、その支配は実効性に乏しい。それに代わる他の強い権力も国内に存在しない。そのため、公的な機関の力だけでは治安など到底保たれないのである。それをよいことに各地で盗賊団や山賊・海賊などが跋扈しており、もはや当局はギルドの賞金稼ぎに頼るしかないという困った有様……。特に地方の領主や小都市は、自らの力では抑えられない大規模な犯罪集団の討伐のため、日常的にギルドの力を借りている。商人たちもギルドのエクターを護衛として雇うことにより、交易の安全をはかっている。
なお、他の国々にもオーリウムと同様のエクター・ギルドが存在する。しかし各国のギルドは全く別個の組織であり、少なくとも表面的には国を超えた結び付きは見られない。実際には、仕事の上で協力または対立することも結構あるらしいにせよ。
エクターケープ
これを身に付けている者がエクターであるということを示す、象徴的なケープ。特に機装騎士にとっては、自らの所属騎士団を表す誇り高き衣装である。組織によって色やデザインは異なるが(一般には白色であることが多い)、薄い生地で織られた三重のケープだという点は共通する。もちろんエクターは公式な身分や役職・資格ではないので、極端な話、アルマ・ヴィオを操ることさえできれば、その時点で誰でもエクターだと名乗ることができる(苦笑)。したがってエクターであっても特定の組織に属していない者は、エクターケープを身につけていないことがある。
ちなみに機装騎士団の新しいメンバーとなる者に対しては、通例として、加入の際に主君や団長等がこのケープを着せるという一種の儀式が行われる。エクターケープを入団者に掛けた後、剣(峰の部分)でその肩を軽く叩く、というのが正式な作法。その際に入団者は、団員としての誓いの言葉を述べることになる。中でもパラス騎士団やレグナ騎士団に入る者は、伝統的に国王自らの手でケープを掛けてもらうことになる。これは機装機士として大変な名誉である。ただし現在は国王が病気のため、メリギオスが代理をするのだろう。こうなると、むしろ大変な不名誉か?(苦笑)。エクター・ギルド等、民間の組織の場合、神官が新規加入者にケープを掛けることも多い(ギルドであれば、支部の所在地に最も近い神殿の神官が行うのが習わし)。クレドールには神官のシャリオさんがすでに乗っているので、新しく同艦のエクターとなる者に儀式を執り行うのは、当然ながら彼女の仕事である。もしもルッキーが正式にクレドール所属のエクターとなるのなら、その折にはシャリオさんの手でエクターケープを掛けてもらうのだろうか。いいなぁ(笑)。