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郷愁を誘うロボットたち
未来を展望 鉄腕アトムの軌跡展 神戸ファッション美術館
夏休み企画の1つが、この「鉄腕アトムの軌跡展」。手塚治虫が「鉄腕アトム」の連載を始めた昭和27年は、日本が戦後の混乱からようやく立ち直り始めたころだった。本展は、その原画やテレビ放映されたビデオなど約100点を中心に構成。20世紀前半の欧米の舞台や映画に登場した〈人造人間〉を振り返り、現在のロボット工学がめざす未来を展望する内容となっている。
現在、ロボットは医療現場や工場の生産ラインだけでなく、電子ペットとして家庭にまで入り込んでいる。本展にはそれらロボット工学の最前線も出品されているが、やはり中心は「鉄腕アトム」をはじめ「鉄人28号」「8マン」「マジンガーZ」「新世紀エヴァンゲリオン」と、いまの大人たちが子供時代に心躍らせ、夢を育んでくれたロボットたち。懐かしい世界が展開されている。
「こうした物語に登場するロボットたちの軌跡をたどっていくと、西洋と日本の自然観の違いのようなものが見えてきます」と神戸ファッション美術館学芸員の百々徹さんは話す。
例えば、ロボットという造語が初めて現れたカレル・チャペックの戯曲「R.U.R.」では、人造人間(ロボット)は最初、人間を苦役から解放してくれるが、ロボットを支配しようとしたため逆襲され、人類は破滅する。ところが日本の漫画では、意のままに操作するのではなく、夢を託しながら、ともに生きる存在として描かれてきた。
先端の科学技術によって生み出されたロボットたちを前にして、思わず考え込んでしまった。医学を学んだ手塚治虫は、「鉄腕アトム」を通して“テクノロジーの暴走”に対し警鐘を鳴らそうとしていたことに改めて気づく。
本展に出品されたロボットは造形作家・岩野勝人らが制作したレプリカやオブジェである。腕や顔のぎこちない動きに郷愁を誘われる大人たちも少なくないだろう。日ごろの展覧会ではあまり見かけない、一人で訪れる男性が目立つ。食い入るように眺める中年男性の姿が、印象的だった。「鉄腕アトムの軌跡展」は9月10日まで(水曜休館)。
By
早瀬廣美
産経新聞 大阪
夕刊 2002年8月14日 (水曜日)ENAK:流行
欄より
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