ぼうけんき
第0話その2『ヨン兄ちゃんの旅立ちの巻』

2005/06/10UP・2010/04/24修正


RPGのようなファンタジーの世界。
そこに3人のショタっ子がおりました。
 
それは冒険者ですらない彼らの無軌道な冒険の物語。
が、まだ始まる前のお話だったりします。


幼い3人の弟弟子、正確には2人の弟弟子と師匠の養子が1人。

その3人のことが心配でヨンは旅立てないでいた。

兄弟子だと言える程の期間を一緒に過ごしたワケではない。

一番長いドーリーでも1ヶ月、ツヴァイで1週間アインに至っては3日である。

3年前に弟子入りしてから師匠が他に弟子を取るとは考えたこともなかった。

まだまだ甘えたい盛りの3人の少年。

最近、おしおき癖のついた師匠に任せるのは少々不安だった。




ごそごそ

「ん?アイン?ドーリーかツヴァイは一緒じゃないのか?」

「あいつらは一緒に寝てる、狭っ苦しいからこっちに来た」

どうして自分のベッドで1人で寝ないのか?

「ここだって狭いだろうに」

「俺、ヨン兄ちゃんに頼みがあって来たんだ!」

「食事の分量なら増やさないぞ」

「あのさ、俺のおちんちんを触ってよ」

Σ(゚゚

「な、なんて?」

「だから、俺のおちんちんを触って欲しいの。頼むよ」

ズルズル

 アインをベッドから引き摺り出して正座させる。

「男の子の癖に男を誘惑するんじゃない!」

アインはきょとんとしている。

「だって、俺、ツヴァイやドーリーより年上なのに一番小さいんだもん、触ったら大きくなるって聞いた」

「誰に?」

「騎士団の人。だから自分で触ってたんだけどお師匠様に『バカになるからやめろ』って殴られた。

 騎士団の人も大人の男にベッドの中で触ってもらうのがいいんだって言ってたから」

「・・・アイン、それはウソだ。変なこと言ってないで寝ろ」

「うん・・・」

 アインは何やら納得できない様子だったがベッドに潜り込むと程なく寝息を立て始めた。

 ぽんぽん。

「はあ、こいつもロクなこと教えられてないな・・・」



「ヨン兄ちゃん、お願い!」

ズボンとパンツを脱いで下半身丸出しのアインがヨンに土下座して頼んでいる。

「一生のお願い!」

「そうは言ってもなあ・・・」

「じゃあ、せめてドーリーとツヴァイにだけでも内緒にしてっ!!」

ヨンはどうやって盛大に濡れてしまった布団をバレずに乾かすべきか悩んでいた。



寝床に入ろうとしたヨンはいつの間にかツヴァイがそこで寝ていることを発見した。

ごそごそ

少年を起こさないようにベッドに潜り込む。

ぎゅっ

男の子が青年を抱きしめる。

ヨンは気付いていた。

ツヴァイが極度の寂しがりであることを。

ぎゅっ

青年も男の子を抱き返す。

「僕も旅に連れって行ってって言ったら困る?」

小さな声が囁きかける。

「困る」

一言だけの答え。



朝、ヨンは頭を掻き毟りながらツヴァイに言った。

「やっぱり、旅には連れて行けないな。宿屋でコレされたら困るし」

「そんなのいいから、アインにだけは内緒にしてっ!」

懇願するツヴァイのズボンには絶望的に大きなおねしょの染みが広がっていた。



「・・・」

慕われているのは確かに嬉しい。
 
しかし、一緒に暮らす3人の男の子が日替わりでネコの仔のように寝床に偲んで来ては、おねしょをしていくというのは嬉しくない。

3日目。
今日はドーリー。
順番があるとすれば明日はアイン、明後日はツヴァイ。



 くーくー
 くーくー
 くーくー

 ヨンは頭を抱えた。

3人同時。

きい。

妙齢の女性、彼らのお師匠様が入ってきた。

「お師匠様・・・」

「こいつら、自分のベッドがある癖に一緒に寝たがるな」

「寂しがりなんですよ、まだ子供ですから」

「その割にわたしのところには偲んで来ないがな」



ばっしゃーん!

「うわっ!」
「ひゃっ!」
「つめたいっ!」

眠っている3人に大量の冷水が浴びせられる。

「ひい」
「ひどいです」
「ひどいよ〜」

ぐしょぐしょに濡れた3人は抗議の声をあげる。



旅の空。

ドーリーはお師匠様を『お義母さん』って呼ぶようになった。

ツヴァイなら安心して家事を任せられる。

アインも二人とは仲良くやっていけているようだ。

心配なのはお師匠様だけど・・・
あいつらのおねしょを誤魔化してやる為に水をぶっかけて起こすとかしてないだろうな?
あの人の愛情は不器用だから。

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