もふもふ

2005/05/09UP


  じょ〜っ。

 その男の子は体操用の白いマットの上で盛大におもらしをしてベソを掻いていた。

「だって、だって、おとうふ・・・」

 確か、寝ぼけて裸で街を歩いた子だ。

 がばっ。

 三角座りをしながら一年生の様子を眺めていた僕の背中に聡史が飛び付いてくる。

「あーあ、情けねえの。去年のお前みてえ」

 確かに僕は去年、おしっこを我慢しながら走り高跳びをやって少しだけ漏らした。
 でもあそこまで派手に漏らしてない。

「一昨年までおねしょしてた奴に言われたくない」

 言い返してやった。
 聡史の情けない過去だ。
 特に幼稚園時代の聡史はおねしょ魔神だった。
 お昼寝の時間に僕までびしょびしょにされたことがある。

「コラ、お前ら真面目にやらないとズボン脱いで校庭3周だぞ!」

 100メートル走の測定をしていた先生が叫ぶ。
 この先生は前に僕らをフルチンで廊下に立たせて校長にこってりと怒られた癖にセクハラをやめない。
 懲りない先生だ。



「一緒に寝よ」

 聡史が僕のベッドに潜り込んでくる。
 
「自分の部屋に帰れよ」

 お兄ちゃんが大学に通い始めて家から出たんで手に入れた念願の一人部屋なのに。
 去年までは狭い部屋に布団を並べて寝てたんだけど、何かあるといつも僕の布団に潜り込んできてた。

 あ、言い忘れてたけど聡史は僕と双子なんだ。
 聡史の方がお兄ちゃんだけど実質的には僕の方がお兄ちゃん。

「怖い映画見ちゃったんだもん」

「・・・いいけどオムツ穿けよな」

 言ってやった。
 聡史は一昨年まで寝る時はオムツを穿かされてたんだ。
 
「お前も穿くのなら」

 僕はおねしょをしないのに聡史だけじゃ可哀想だからって穿かされてた。
 凄く嫌だった。
 ・・・そりゃあ確かにトイレに行くのが怖かった時や面倒だった時にしちゃったこともあるけど・・・
 あれはおねしょじゃない!

 もふもふ。

 テレビで怖い映画を見たせいか妙な声が聞こえる気がする。

 もふもふ、もふもふ。

 僕は聡史を、聡史は僕をぎゅっと抱きしめた。
 怖いから一緒に寝よ。


 ごそごそ・・・

 僕は下半身がすーすーする感触で目を覚ました。
 聡史がこっそりとパンツを脱がせようとしているらしい。

 もふもふ。

 あーあ、まだ妙な幻聴が聞こえるよ。

 寝たふりしてやろ。

 ふにっ。

 ひゃっ、冷たい手でおちんちんを触りやがった。

 無視して寝てやる。

 もふもふ、もふもふ。

 つんつん。

 しつこいな、お尻をつんつんするなよな。

 ぐにゅっ。

「ひゃん!」

 僕は声を出してしまった。
 でも悪戯にも程がある。

「いい加減にしろよな、お尻の穴に指なんか挿れんなよ!!」

「お前こそ、俺のちんちんを触りまくるんじゃねえよ変態!」

 薄明かりに見ると聡史もフルチンになっている。
 僕らのパジャマとパンツはベッドの横にマットレスと一緒に転がっていた。

 えっ?
 マットレス?
 今、僕らが寝てるのは?

 もふもふもふもふ。

 ずずっと身体が沈む。

 豆腐?
 そうこの感触は豆腐だ。
 僕らは巨大な豆腐に乗ってるんだ。
 そして少しめり込んでる。
 ドジョウが豆腐に逃げ込む料理みたいに豆腐に入り込んでいるんだ。

「うひっ!」

 細いドジョウのようなものがお尻の穴に入り込もうとしている。

 や、やだ、そんなのやだ。

「ぐはっ!!」

 すると更に細い奴がおしっこをする穴に入り込んだ。

 い、痛い・・・

 なんなんだよコレ?

 もふもふもふもふ。

 妙な声が聞こえる。
 豆腐の鳴き声?

 さ、聡史は?
 
 ぺっ、どさっ。

 聡史は豆腐から吐き出され床に転がっている。

「聡史、聡史・・・」

「くーくー」

 呼びかけても呑気に寝てやがる。
 さっきまで一緒に叫んでた癖に。
 頼りにならない奴だ。

 もふもふもふ。

 僕の身体は豆腐に沈み込むばかり。
 ドジョウのようなものがお尻の穴の周りやおちんちんを触ってくるし、豆腐自体もプルプルしてて変な気分。
 そ、その・・・おちんちんが大きく・・・勃起してきちゃった。
 と、時々あるんだ。
 Hな夢を見た朝とか・・・
 夢精、初めてそれをした時はコッソリとお父さんに相談したんだ。
 そしたら僕の方が聡史より大人だって言われた。
 男だったら誰でもそうなるんだって。
 今は、またアレが出そうな感じ。
 そして物凄くイケナイことをしている気がした。

 ふえええええん。
 で、出ちゃった。
 僕は恥ずかしい気持ちで一杯だった。
 ずぶずぶずぶずぶ・・・
 そして身を隠すように豆腐の中に全身を沈める。

 もふもふもふ。
 豆腐が喜んでいるような気がする。

 ずるずる。
 移動してる。
 豆腐は僕を呑み込んだまま移動してるんだ。
 ぼ、僕はどうなっちゃうんだろう?
 
 ぴゅっ。

 そんな時なのに僕はドジョウに刺激されてまた出してしまった。
 僕って変態だったんだ。
 でも・・・気持ちいい・・・
 すーっ眠るようにゆっくりと意識が遠くなっていった。



 もふもふ、ずるずる、ぺっ!

 ガヤガヤ、

 遠くで人の声がする。
 
 ガヤガヤガヤ、
 
 声が大きくなってくる。

 ちょんちょん。

「生きてる?」

 誰かが木の棒で僕を突っつく。

 わっ!
 なんでこんな所に?

 僕は学校のグランドで寝ていた。
 しかも、服を着ていない。

 顔を真っ赤にして教室に走る。
 体操服があった筈。

 でももう登校時間で・・・

「ナニやってんだよ!お母さん心配してやんだぞ!」

 教室の前で聡史に怒られる。

「ふ、服持ってないか?」

「持ってるわけねえだろ!」

 た、体操服・・・
 あーっ、洗濯してたんだ!

 結局、保健室で体操服を借りたんだけど裸で校内を走り回る破目になった。

 豆腐のせいだって言っても誰も信じてくれないだろうし。



 もふもふもふ。

 け、消しゴムって豆腐に似てるよね。
 その・・・四角くて白いところなんか。
 見てるとなんか、おちんちんが熱くなるんだ。
 テストの時に答案をゴシゴシしてたらなんかこう・・・
 別のところをゴシゴシてるような気分になっちゃって・・・
 トイレに駆け込んじゃったんだ。

 それだけは聡史にもナイショ。

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