でんきあんまとおんなのこ

2005/04/30UP


 尚久は一つ年下の従兄弟である亮太と祖母の家に来ていた。
 二人の両親が遠くに法事に行ったので2日程を過ごすのだ。

「こんにちわ〜っ」
「こんちわ〜っ」

 二人出迎えたのは祖母の声ではなく同じ年頃の女の子の声だった。

「わ〜っ、尚ちゃんと亮ちゃん?大きくなったねえ」

「・・・誰?」

 尚久は顔を紅くする。
 可愛い女の子・・・
 
「もしかして、マコちゃん?」

 亮太が自信なさげに尋ねる。

「そうよ、あんまり美人のお姉さんになったんで分からなかった?」

 真子は尚久よりも一つ上、亮太よりは二つ上の従姉弟である。
 3人の親は兄弟。
 尚久と亮太の両親が法事である以上、真子の両親も法事なのだ。

「孫が3人共揃ったのなんて何年振りかしらね」

 祖母は嬉しくて堪らないという表情だ。



「何して遊ぶ?」

 一番年下の亮太が真っ先に口にする。

「ゲームやろうよ。わたし2台持って来たんだよ、ケーブル付きで」

 一番年上の真子は自分に選択権があると思っているようだ。 

「え〜っ、もっと違うことしようよ。今しかできないようなこと」

 尚久は不満げだ。
 
 久し振りに会った従姉弟はモロに好みの女の子に成長していた。
 亮太さえいなければもっと楽しかったのに。
 せめて、そう、僕がお父さん役でマコちゃんがお母さん役で・・・

「・・・ままごととか」

 思わず声に出てしまった。

「ままごとか、いいわよ」

「えっ?」

「え〜っ、そんなの嫌だよ」

「当然、わたしがお母さんでふたりは子供ね」

「なんで?僕がお父さんで亮が子供だろ?」

「ぼく、子供なんて嫌だよ」

「今は、しんぐるまざーが流行りなの、尚ちゃんと亮ちゃんが赤ちゃんの役。
 それでわたしがオムツ換えたりして育てるの」

 尚久も亮太もオムツを換えられるのは死んでも嫌だった。

「げ、ゲームにしよ」

「うん、ゲームがいいよ、ゲームが」

「え〜っ、面白そうだったのに・・・じゃあ一番勝った人が一番負けた人に何でも命令できるのね」



 考えてみれば、真子の持ってきたゲームなのだから真子が一番上手いのは当然だった。
 亮太も家にゲームを持っている。
 必然的に負けるのはゲーム経験の浅い尚久。

「尚ちゃんの負けー!」

 真子がニッコリと微笑む。

「じゃあね、マコが尚ちゃんに電気あんまするっ!」

 電気あんま?

「肩こり治すの?」

 尚久はその単語を知らなかった。

「なにそれ?」

 亮太も知らないらしい。

「こういうの」

 真子は尚久の右足を右手、左足を左手で掴むと右足を股間に持っていった。

「でね、こうするの」

 だだだだだだっ。

「ふぎゃあああああああっ・・・」

 突然の衝撃。
 女の子の足の温かさを股間で感じて恥ずかしくなった次の瞬間に激震が襲う。
 亮太は目を白黒させている。

「これが電気あんま、クラスでは禁止されてるの」

「尚ちゃん?大丈夫?」

「や、やめて・・・」

 真子はケタケタと笑いながら責め続ける。
 子供だけに限界が分からないのだ。

 やがて尚久は熱いものが込み上げてくるのを感じた。

「や、やああああああ」

 ぶしゅ。
 じょおおおおおおおおお・・・
 
 あっという間にズボンに染みができて広がりポタポタと垂れながら湯気を上げる。

「うわ〜ん・・・」

 尚久の目から涙が零れ落ちる。
 
 亮太は何をどうすればいいのか分からずおろおろしている。

 バタバタバタ。

 真子は走り出した。
 そして叫ぶ。

「おばあちゃ〜ん、尚ちゃんがおもらししちゃったの〜っ!」



「あれあれ、もう大きいのに」

 おばあちゃんはそう言いながらも尚久のズボンとパンツを脱がせバスタオルで拭いてくれた。

「昔、お父さんが穿いてた奴だけど大丈夫だよね」

 タンスの奥から出してくれたのは古いデザインの半ズボンと白いブリーフ。

 尚久や亮太の年代だと小学生ともなればトランクスと膝までのズボンが当たり前だ。
 現に今の亮太もそうだし、さっきまでの尚久もそうだった。

 少なくとも好きな女の子の前でしたい格好じゃない。
 だけど、フルチンでいるのはもっと嫌だった。
 しぶしぶながら我慢して穿く。
 真子は興味深げにその光景を眺めていた。
 ひちぴちのブリーフも股下が極端に短いデニムの半ズボンもぎゅっと締め付けられる気がする。
 屈むとお尻に食い込んでくる。

「尚ちゃん、幼稚園の子みたい・・・可愛い」

 真子にそう言われてちょっと複雑な気分。

「じゃあ、尚ちゃんは、ぼくの弟ね」

 亮太にまでそんなことを言われる。

 楽しそうな真子と亮太。
 それとは対照的に機嫌の悪そうな尚久。

「あ、ごめんなさい。お風呂に入ってもらえばよかったのね」

 おばあさんは後から気が付いたようだ。

「せっかくだから3人で入ってきちゃいなさい」



 どきどきどきどき。

 マコちゃんとお風呂・・・
 尚久は期待と不安の入り混じった不思議な気持ちだった。

「わたしが先に入るね」

 一瞬、白くなる。

 そうだよな。
 女の子だもん。

 真子があがるまでの間、尚久は亮太を相手にゲームの特訓。

 風呂上りの女の子を見たかったんだけど亮太に引っ張られたせいで見れず。

 亮太、邪魔なんだよな。

 嬉しそうにパンツを脱ぐ従姉弟を見ながら尚久は思った。

「身体を洗う前に湯船に入っちゃダメだよ」

「弟の癖にウルサイんだよ、尚ちゃんは」

「僕の方が年上だよっ」

「違うもん、おもらしするような子は幼稚園なんだもん」

「・・・」

 お前だって"電気あんま"されたら漏らすんだよっ!

 尚久は顔を真っ赤にしながらそう思ったが言わなかった。

 身体の洗いっこをして、肩まで浸かって100まで数えて出る。

 脱衣場にはさっきのブリーフと半ズボン。

 尚久は少しだけ気分が重くなった。



 くーくー。

「マコちゃん寝てるね」

「うん」

「僕らも寝ようか」

「うん」

 平和なお昼寝タイム。

 でも尚久は平和じゃない夢を見た。

 真子と亮太がお父さんとお母さん。
 そして尚久は赤ちゃん。
 真子が尚久のオムツを換えている。
「尚ちゃんったらまたおもらししてる」
「電気あんましたら」
「そうだね」
 や、やめて。
 だだだだだだ・・・
 ふぎゃああああ。
 ま、またもれちゃうよお。

「・・・嫌な夢」

 あれ?
 冷たい?

「尚ちゃん!!」

「酷いよ尚ちゃん、ぼくらまでびっしょり」

「えええ?」

 尚久のお尻の下には絶望的なまでに大きな世界地図が広がっていた。



「あれあれ、尚ちゃんがおねしょするなんて聞いてなかったのにね」

 おばあちゃんは怒りもせずに後始末をしてくれている。

「わたしがふたりをお着替えさせてあげる」

 真子がバスタオルを持って張り切っている。

「じゃあ、頼むよ」

「うん、亮ちゃんはコレね」

「やだあ、幼稚園みたい」

「だってコレしかないもん」

 亮はしぶしぶながら真子にブリーフと半ズボンを穿かせてもらう。

「尚ちゃんはコレね」

「え〜っ、やだよお」

「尚ちゃんが、おもらしやおねしょするのが悪いんだよ。もう他の服ないもん」

 そう言いながら真子が広げたのは女の子のかぼちゃパンツとスカート。

 あ、でもマコちゃんの服?

 そう思うと恥ずかしい女装もちょっぴり嬉しい尚久だったのです。

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