あきらちゃんとお風呂と初恋

2005/06/01UP


 洗面器と石鹸とシャンプーは向こうにあるらしい。
 だから僕は大き目のバスタオルと小さい目のバスタオル、それに腰に巻く為のタオルを持って歩いていた。
 気が重い。
 何日かお風呂に入らないぐらいどうってことないと思う。
 なのにお母さんに風呂屋に行くように言われちゃった。
 人前で裸になるなんて変態じゃあるまいし。
 でも水着を着ていこうとしたら怒られた。

 ・・・気が重かったのはさっきまでの話。

 僕は、うきうきと飛び跳ねたいぐらいの幸せを感じていた。

 あの子。

 駅前の喫茶店を手伝っているあの子。
 小学生の僕は勿論、店の中に入ったことはないけれど窓越しに見る可愛い子。
 ちょっと男の子みたいなところがあるんだけど無茶苦茶に美少女。
 歳は僕より少し下ぐらい。
 2、3年生?
 いやもしかすると1年生かもしれない。
 でも、凄くしっかりした感じがしていつも笑ってて・・・

 そうか、この辺の子だったんだ。

 もう口実を見つけて電車で叔母さんの家に行かなくてもいいんだ。

 僕は、ほわわわんとした幸せを噛み締めていた。

 僕の少し先をぱたぱたと歩いて行くあの子。

 そうか、あの子もお風呂屋さんに行くんだな。

 何処かのおばさんに挨拶してる・・・

 やっぱりこの辺の子なんだ。

 がらっ。

「おや、あきらちゃんいらっしゃい」

 番台のおばちゃんがあの子に声を掛ける。

 そうか、あきらちゃんっていうのか。

 僕はあの子に続いて脱衣場に入るとなるべく近づいた。

「今日も褌が男らしいね」

 番台のおばちゃんが・・・

 って?

 男湯?
 で、赤い褌?

「な、なんで褌?」

 僕は浮かんできた嫌な予感を必死に打ち消そうとしていた。

 すると、するすると褌を外したあきらちゃんが話し掛けてきた。

「褌って気持ちいいんだよ、お兄ちゃんも試してみたら?」

 こくん。

 僕は思わず頷いてしまった。

「じゃあ、ボクが締めてあげるね」

 あっ、笑顔。

 でも、いつもの笑顔と少し違う。

 男の子っぽい悪戯な笑顔。

 ずるっ

 うわっ!

「いい、いいよ、恥ずかしいから脱がさないで」

 あきらちゃんは僕のトランクスに手を掛けて脱がそうとした。

「お風呂だよ?どうせ脱ぐのに」

 ぐいぐい

「道場でも何人かの子に締めてあげたら褌派になったんだよ」

「道場?」

 僕は、おちんちんがすーすーする感覚を味わいながら何かが崩壊していくのを感じた。

「うん、柔道の道場。ボクこれでも強い方なんだよ、6年の子でも投げ飛ばせるもん」

 わわわっ!

 僕は好きだった子におちんちんをばっちりと見られて真っ赤になった。

 しかもさっきまでその子が着けていた下着を・・・褌だけど・・・穿いている。

 目の前には残酷な現実があった。

 この子が女の子な筈ないよな。

 僕よりずっと男の子してる。

 こんなに可愛い顔をしてるのに。

 でも・・・
 隠そうともしていないおちんちんは確実に僕より大きいし・・・

「あ、あのね・・・お姉ちゃんとかいたりしない?」

 僕は最後の希望を繋ごうとした。

「いるよ、ボクとそっくりだってよく言われるの」

 がしっ

「あきら、家に遊びに行くから」

「いいけど、お風呂入ろうよ」

 ****

 番台のおばさんは少し苦悩していた。

 あきらのお姉ちゃんが大学生だという事実を告げるべきかどうか。

 TOPへ戻る