赤いズボンの男の子3

2000/5/20UP

注)先に『赤いズボンの男の子1,2』をお読みください。でないと話が通じません。

(解説)
 あきらくんと仲良しの姉弟ですが、あきらくんの生まれる少し前までは近所に住んでいた
 おねえちゃんの幼馴染という設定になっています。
 その昔は、ヒロシ兄ちゃんが、あきらと同じ立場にいたと推測されます。


 
 わ〜ん、おねえちゃんなんか大嫌いだあ〜!

 ボクの宝物返してよ〜

「ピンクのパンツなんか履いちゃダメ!ちゃんと白いブリーフを買ってあげてるでしょ?」

 だって〜、ピンクのパンツって好きなんだもん。

 お父さんが買ってくれた赤いふんどしまで捨てちゃったじゃないか〜

「お友達にもバカにされたんでしょ?」

 いいんだも〜ん。ボクの個性なんだから。

「あんた、オカマだのホモだのって噂されてんのよ」

 でも〜、赤っぽいのって好きなんだも〜ん。

「そんなに、赤い下着が好き?」

 うん。大好き。

 えっ?そんな顔しないでよ〜。怖いよお。

 イ、 イタイってば〜、やめてよ〜!

 ボクなんにも悪いこといてないのに〜

 お尻、ぶたないでよ〜。

 ふ〜んだ。

 おねえちゃんなんか、だいっつキライだあ。



「あれ?あきらくん?」

 おねえさん、こんにちは。

「どうしたの?おねえちゃんと一緒?」

 ううん、ケンカしてきちゃったの。

「ここまで遠かったでしょ?」

 うん、でもおねえさんの顔が見たかったの。

 電車も1人で乗れたんだよ。

 偉いでしょ。

 ベシッ!

 あ〜ん、怖いよお。

 なんで、ほっぺた叩くの?

「あのね、おねえちゃんが心配してるでしょ?」

 い〜んだもん。

 ベシッ!

 痛いってば〜。

「おねえちゃんに心配かけるような子は悪い子よ!」

 ふえ〜ん。

 おねえさんはボクの味方だって思ってたのに〜

 グスグス……

 あ、おねえちゃんに電話してる。

「おねえちゃん、どこ行っちゃんだろって、とっても心配してたわよ」

 だって〜、おねえちゃんが悪いだあ。

 ボクの大事にしてた物を勝手に捨てちゃって、お尻をぶったんだよ。

 そんなに赤いパンツがいいんなら、赤いお尻にしてあげるとか言って

 え?何で、おねえさんまで怖い顔すんの?

 おねえちゃんとおんなじ顔してる〜

 やだよ〜、なんでズボン脱がすの。

 わ〜ん、やめてよ〜

 はずかしいよ〜、イタイよ〜、お尻ぺんぺんしないで〜。

 グスッ…、ボクってそんなに悪い子なの?

「ヒロシ、ちょっとこの子を送って行ってくれる?」

 おねえさんはそう言って、おにいさんを呼んだ。

 ボクの履いてる赤いズボンを小さい頃に履いてたって言うおねえさんの弟さんだ。

 やっぱり、女には分からないよね。

 こういう話は男どーしでないと。



 ボクとおにいさんは電車に乗った。

「あのな、おねえちゃんに心配かけちゃダメだぞ」

 あ〜ん、おにいさんまでおねえちゃんの味方なの?

 「あきらくんは、男の子なんだろ?」

 うん。

「だったら、おねえちゃんを護れるような強い男にならなくっちゃダメじゃないか」

 だって〜

「なんで、おねえちゃんが白いブリーフを履けって言うか分かるか?」

 ワカンナイけど、みんなが履いてるからでしょ?

「白いブリーフを履かないと強い男の子になれないんだよ」

 え〜、ウソだあ。

「ウソなもんか。マンガの柄のパンツって小さい子の奴か大人用のだろ?」

 う〜ん、そういえば。

「あきらくんぐらいの男の子は白いブリーフの方がいいんだよ。
 だからあんまり売ってないんだ」

 そうなの?

「それに白いブリーフの方がカッコいいんだぞ。お兄ちゃんだって履いてるし」

 ヒロシにいちゃんはそう言って、ちょっとだけ見せてくれた。

 「今、パンツ履いてないんだろ?買ってやろうか」

 あ〜ん、サスペンダー外さないでよ。

 ズボンが脱げちゃうよ〜。

 ボク、ヒロシにいちゃんのこと好きだよ。

 やさしいしカッコいいんだもん。

 それに、おねえちゃんにあやまるのが怖いって言ったら、お花を買ってくれたの。

 こう言えばだいじょうぶってセリフも教えてくれたし。



「あきら!おねえちゃん、心配したんだからね。……ヒロシくんどうもありがとう」

 ヒロシにいちゃんは、おねえちゃんにあいさつするとサッサと帰っちゃった。

 あのね……これ、おねえちゃんにあげる。

「ピンクのカーネーション?」

 ボクがピンクが好きだからじゃないよ。

 ほら、今日って母の日なんでしょ?

 うん、お母さんがいない子は白い花なんだよね。

 でも、ボクにはおねえちゃんがいるもん。

 死んじゃったお母さんに悪いから赤じゃなくってピンクのでガマンしてね。

「あきら……」

 おねえちゃんはボクを抱きしめてくれた。

 ヒロシにいちゃんって凄いや。

 ホントに怒られなかったもん。




 その晩、ボクはヒロシにいちゃんに電話した。

 うんうん、やっぱりボクもヒロシにいちゃんのこと好きだよ。

 お父さんにおねだりして柔道を習わせてもらうの〜。

 うん、ボクがおねえちゃんを護れるように強くなるの。

 ……今はまだ護ってもらってるけど、6年生ぐらいになれば大丈夫だよね。

 うんうん、約束したもんね。

 今度、白いブリーフの見せっこしようね。

 うんうん、プールとかお風呂とか一緒に遊びに行こうね。

 ガチャン。

 えっ?

 おねえちゃん?どうしたの黙っちゃって?

 ショタコンって何のこと?

 ねえ?
 

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