ピンクのズボンの男の子

2000/11/29UP

(解説)
 何となく隠してみました(笑)
 コピー誌『ふんどちっ子どしどし』の為にちょっとリメイクしたあきらくんです。
 時期的には8月だったから、3より後なんですが、より幼い感じになっています。


「あ〜きらく〜ん」

 おねえちゃんがボクを『君づけ』で呼ぶのは怒っている時だ。

 あ、あの、ボク用事があるから……
「待ちなさい」

 逃げようとしたボクをおねえちゃんがガッシリと捕まえる。

 シャツのえりをつかむのはやめてほしい。

 ネコじゃないんだからさ。

 ボクは、苦しいのをガマンしてジタバタと暴れる。

 ボ、ボク服を着替えて学校へ行かなくっちゃ……

「バカ、ネコはシャツなんか着てないし、今日は日曜日よ」

 ずるずるずる……

 わ〜ん、引っ張ってかないでよ〜

 自分で歩くからさ〜

「おねえちゃん、言ったよね〜ジュースを飲みすぎだって〜」

 だって、だってお父さんだってビールを飲んでたんだも〜ん。

「あきら、あんた夕べ何て言った?」

 あ、あの……それは…

「おんなじことを言ってごらん」

 大丈夫、おねしょなんてしないよって……

「じゃあ〜、このお布団のおっきな地図はだれがかいちゃったのかな〜?」

 ごめんさ〜い!

「あれだけエラそ〜なこと言ったんだから、あきらの筈ないよね
 じゃあだ〜れがやったのかなあ〜」

 ボ、ボクがやりました。

「オシリぺんぺんかな〜?やっぱりお灸かな〜?」

 ど、どっちもヤだ〜

「うーん、カワイソウだから、もっと軽いので許してあげる。

 おねえちゃんの部屋まで来なさい」

 ボクは逃げ出したいのをグッとガマンしてトコトコとついていく。

「このズボンって、あきらくんに似合うと思うんだ」

 げっ!

 ピンクのズボン?

 女の子のじゃないか〜

「男の子用のよ。ちゃんと前空いてるもの」

 ふえ〜ん、どこでそんなもの買ったの〜?

「履きたくない?」

 うん。

「だったら、今日一日その格好でいてね」

 うん。ちょっと冷たいけど。

「じゃあ、お出かけするわよ」

 え〜っ?

「あきらは、おねしょしたパジャマでお出かけしたいんでしょ?」

 やだ〜!

 わかったよ〜

 履けばいいんだろ履けば。

 うわ〜っ、ピンクのシャツ。

 あの…それも着なくちゃいけないの?

「うん、あきらに着せようと思って
 友達からもらってきてあげたんだから」
 
 もらってこないでよ〜。

 
 明日も祝日で休みだから『家族サービス』ってので、
 お父さんはボクたちを温泉に連れて来てくれた。

 遊園地の方がいいのに〜

 きっと自分が来たかったんだ。

 ズルイよなあ〜大人って。

 でも、お父さんは車を運転して来たんで疲れてノビちゃってる。

 ねえ、ねえ、お風呂に行こうよ〜。

 「あきら、おねえちゃんと一緒にお風呂に行こうね」

 うん。

 おっきなお風呂って楽しみだなあ。


 あのね、ボクってさ、男だよね?

 ピンクの服着てるから、おじちゃんには女の子に見えたのかな?

「今ね、男湯の方は誰も入ってないんだって。
 子供一人だと危ないでしょ?」
 
 え〜、女湯なんてヤだよお。

「大丈夫。八歳以下はどっちに入ってもいいことになってるの」

 でも〜

「仕方ないでしょ。お父さん寝ちゃったんだから」

 女湯も誰も入ってないといいのになあ。

 でも、なんかおばちゃんたちの声がするし〜。


「はい、脱いだらこれ履いて」

 え〜、そんなのやだよ〜。

 お風呂って裸で入るんじゃないの〜

「おばちゃん達に、おちんちん見られたくないでしょ?」

 ……うん。

「この温泉の売店で売ってたお風呂用の奴だから大丈夫よ」

 おねえちゃんが差し出したのは、白いふんどし。

 お相撲さんのまわしみたいな奴じゃなくってベロンとした、
 えっちゅうふんどしって奴。

「履かないんなら、おねしょのお仕置きにお灸しちゃうから」

 わ、わかったよ〜。

 ちぇっ弱みを握られちゃったみたい。


「あら、坊やカッコイイじゃないの」

「ホント、とっても男らしいわよ」

 おばちゃん達は口々にボ、クを誉めてくれる。

 えへへ……

 でも、男らしい男の子は女湯に入らないんじゃないかな?

 おばちゃんたちが、脱げ脱げって言うんで調子に乗って脱ごうと
 したらおねえちゃんに怖い顔でにらまれちゃった。

「脱ぎ癖や見せ癖がついたら終わっちゃうわよ」

 ね?何が終わるの?ねえ?

 わ〜ん、ポカポカ殴るのやめてよ〜



 部屋に戻るとお父さんは浴衣を着ていた。

 そして、ボクにも着せてくれた。

 下にはパンツじゃなくって、さっきのふんどしを履いてるんだ。

 お湯でぬれちゃったんだけど、ふんどしってねギュって絞って
 パンパン伸ばしてエアコンの前に吊るしておけばすぐに乾いちゃ
 うんだよ。

 今度から寝る時、ふんどしにしようかな?

 すぐに乾いて便利なんだも〜ん。

「布団とパジャマは乾かないわよ」

 ギク!

 や、やだな。

 そんなこと考えてないってば〜

 あ、これって大人用だから、ヒモがいっぱい余っちゃってる〜

 あはは、ヒモ解いたら簡単にストーンって脱げちゃうんだね。

 気をつけないとね。

「今夜は家じゃないんだから、ジュースもお水もダメよ」

 は〜い、わかってま〜す。


 
 う〜ん、むにゃむにゃ……

 おばちゃ〜ん、おトイレってどこ〜?

 うん、ボクってちゃんと夜中におトイレに行けるんだよ。

 エラいでしょ〜。

 でも〜、ねむいの〜



「あーあ、ヤッパリはだけちゃってる。あきら、起っきして。
 風邪引いちゃうわよ」

 ちゃんと着てた筈の浴衣はすっかり脱げそうになっていた。

 そうか、ヒモがほどけちゃったんだな。

 ふんどしのヒモもほどけちゃって、
 お布団の横にけり出しちゃってる。



 ボクは、お洋服を着ておねえちゃんと顔を洗いに行った。

 そしたら昨日、お風呂場で会ったおばちゃんがいた。

 何?お風呂では履いてるのに、廊下では履いてないのねって?

「ね、あきら。あんた夜中に、おトイレとか行った?」

 おねえちゃん?

 どうしたの?

 頭なんか抱えちゃって。

「坊やって、ピンクが似合うのね。女の子みたいでカワイイわよ」

 おばちゃんは、ボ、クの頭をなでてくれちゃった。

 その後で、出会った女子大生のおねえさん達も、カワイイって
 言って頭をなでたりほっぺたをぐにぐにしてくれた。

 ふんどしを見せてあげたら、キャーって喜んで、ちゅってして
 くれたり、お菓子を買ってくれたりしたんだ。

 温泉って楽しいし、お洋服もふんどしも気に入っちゃった。
 
 あれ?
 
 おねえちゃん?
 
 このお洋服着せてくれたのも、ふんどしを履かせてくれたのも
 おねえちゃんだよ?

 なんでこれ着て学校行っちゃいけないの?

 ねえってば?
 

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