お子様探偵の事件簿2「ウサギとネコの秘密」
解決編

2001/4/25UP

(解説)
 難航しまくった解決編。
 怒らないでくださいね。


 タタタタタ……

 ガラガラガ…… 
「すいません遅くなりました!」
 ……ラガラガラ。

 新と太一は、息を切らせながら教室の扉を開く。

「祭、頭に葉っぱが付いてる」

 佐藤先生の声に慌てて頭に手をやる太一。

「バカ」

 新は額に手を当てる。

「やっぱりウサギ小屋に行ってたな。ところで丸山?」

「はい、ちゃんと全部分かりました」

「いや、そういうことじゃなくてだな、お前幾つまで、おねしょしてた?」

「は?」

 何の脈略も無い。

「この前のネット事件の時の写真はどうみても1年生か2年生だよな。小学生
になってもやったってことになる。まさかまだやってるのか?」

 クラスが急にざわつき始める。

「や、やってません。もうとっくに治りました」

 新は真っ赤になって反論する。

「祭だって怪しいもんだ。この前の遠足の時、トイレが間に合わなくって少し
パンツの中に漏らしたろ?」

 アチコチから失笑が聞こえてくる。

「二人共トイレに行くって言って教室を出たよな?漏らしてないかどうか調べ
てやるからズボンを脱いで見ろ」

「そ、そんなの嫌です」

「俺だって嫌です」

 二人は必死で反論する。

「調べられたくないだろ?そういう事だってあるんだ」

「それは、脅しですか?」

 新は佐藤を睨む。

「先生にも分かったんですか?」

 と太一。

「いや、違うよ。先生は共犯なんだ」

「丸山!真相を暴き立てることが正しいとは限らないんだぞ」

 佐藤先生は、この段階で失敗した。

 クラス中から、謎解きをやれという声が響いてきたのだ。

 これを何とかしないと収拾が付かなくなる。

「分かった。丸山、犯人の名前を出さずに謎解きできるな?」

「やってみます」

「じゃあ、許可する。お前の推理を披露してみろ」


 新は教卓に立つと咳払いをした。

 傍らに佐藤と太一が立つ。

「まず、この事件……と言っていいか分かりませんが、幽霊騒ぎが無ければ、
単にウサギが居なくなったってだけでした。なのに、幽霊の話があったから
騒ぎが大きくなっただけなんです」

「じゃあ、幽霊とウサギは無関係?」

「それが関係あるからややこしくなったんだよ」

「どういうこと?」

「幽霊の声っていうのはネコの声だったんだよ。誰かが旧物置でコッソリ飼っ
てたんだ。場所が場所だからそう聞こえたんだ。もしかすると最初に幽霊だっ
て騒いだ人は夜中に聞いたのかもしれない」

 新は、にゃあ〜んとネコの真似をしてみせた。

「あ、確かに幽霊の声にも聞こえる」

「だろ?ネコの声が正体だったって話は多いんだよ」

 なあ〜んだという声がアチコチから聞こえてくる。

「なあ、太一。お前が昔飼ってたウサギってどうなった?」

「え?近所の野良猫にやられて……あ、そうか!小屋の破れた隙間からネコが
入り込んだんだ!一度に2匹も襲えないから1匹だけ襲ったんだ!!」

「そう、ウサギを殺しちゃったんだ。で、朝一番に登校する佐藤先生がそれを
見付けて処理したんだ」

「証拠は?」

「足跡がクッキリしてたの覚えてるよな?普通なら踏み固められた小屋の中の
地面に足跡なんか殆ど残らない。ガチガチだからね。でも水で血の跡を洗い流
したんだ」

「正確には、その後スコップで少し埋めた」

 と佐藤が追加した。

「で、多分ネコが広げた隙間を修理したんです」

「なんでそんなことを?」

「お前が先生の立場だったとして、ウサギの死体なんかそのままにしとくか?

大きな穴もふさぐだろ?」

「正確には、穴じゃなくって扉の所が古くなってて外れたんだけどな。昨日の
当番が乱暴に扱うから」

 気まずい空気。

「俺達?」

 コクン。

「でも、なんで言わなかったんですか?ネコにウサギがやられたんだって」

 太一がもっともな疑問を口にした。

「それは……」

「僕が先生に頼んだんだ!秘密にしておいてくれって!!」

 そう叫んだのは谷口くんだった。

 そしてそのまま机の上に泣き崩れた。

「どういうこと?」

「ネコを飼ってたのは谷口なんだよ。だから牛乳やフライを持って来たんだ。
家で飼えないから物置小屋に閉じ込めてたんだよ。先生が、俺達に幽霊の話を
したのは暗に谷口にもバレてるぞって警告したんだ」

「なるほど」

 谷口は泣きじゃくりながら言った。

「ウサギを襲ったネコだなんて貰い手が居なくなるって思ったんだ!ネコは今、
先生の部屋で預かってもらってる」

「そうか、先生んちって学校のすぐ側だもんな」

「で?」

 佐藤が新と太一を睨む。

「協力してくれるな里親探し。人の隠そうとしている秘密を暴き立てて泣かし
たんだから。ネコだけじゃないぞ。ウサギもな」

「なんでウサギまで?」

「ウサギは寂しがり屋だから1羽にしとくと死んじゃうんだよ」

「返事は?」

「分かりました。協力します」

「よろしい」


「……でなんでコスプレなんですか?」

「こうやって目立つ格好でアピールした方が効果的なんだよ」

 こうして、新と太一はバニーボーイとキャットボーイの格好で
道行く人々に頭を下げる羽目になった。

 手には、ネコとウサギを抱えて。


「佐藤先生?」

「なんですか校長」

「あの格好は教育上好ましくないんじゃないのかね?」

「何を言ってるんですか、可哀想な小動物の里親を探そうと、恥ずかしい格好
までして頑張ってる二人の気持ちが大事なんです。やらせてやってください」

「…………」


「丸山、祭!」

「何ですか?引き取り手は見付かったんでしょ?」

「もうあんな恥ずかしい格好ゴメンですからね」

「いや、演劇部が『ネコ君とウサギ君』ってシナリオを書いて応募したら当選
しちゃったらしくって、お前等に主役をやってくれって依頼が……」

 二人は、最後まで聞かず逃げ出していた。

 冗談じゃない。あんな格好俺以外に見せるもんか!

 二人はお互いにそんなことを考えていた。

 そして同時に言った。

「なあ、こんどネコとウサギと交換してみない?」


解決してない解決編、完。
※次回から、ケモショタ少年の事件簿が始まります(ウソ)
 

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