事例42
『死者への勧誘』


(もしもし、奥様はいらっしゃいますか?)
 それを聞いた瞬間、私は『来た』と思いました。
 不謹慎ですが、こういう電話が来るのを待っていたのです。
「あの、どういう名簿を元に電話をされているのですか?」
(いえ、あの,**様は……)
 相手は母の名前を口にした。
 これを聞いた瞬間に『やった』と思いました。
「母ならいません、ねえ、どういう名簿で電話してるんですか?」
(あの、電話帳を元に順番にお電話を差し上げているんですが)
「おかしいですね、うちは電話帳に載せてないんです」
(え?いえ、電話帳と言いましてもNTTの物ではなくてですね、当社が独自
に作成したもので……)
「普通それを名簿って言いませんか」
(そうなんですが……)
「失礼ですが、その名簿を売り付けた業者とは縁を切るように上の人に言った
方がいいですよ」
(は?何を言ってるですか?)
「うちの母は、10年も前に死にました」
(はあ…そうなんですか)
 この辺りでイヤになったのか向こうから電話を切られました。
 あ、しまった何の売り込みだったのか聞くのを忘れた。

 相手はオバさんでした。
 そうでなければ、ツッコミは入れられなかったと思います。
 ちょっと捕捉して置くと、うちの亡き母は小さなスナックを営んでいました。
 我が家の苗字は珍しいので、電話帳を見てイタズラ電話をしてくる人がいて
電話帳への記載を止めてもらってそのままにしています。
 又、母は小柄で店で合うサイズの服が買えなかったので通販の愛用者でした。
 恐らくは古い名簿で『常連』と記載されていたのでしょう。
 未だに母宛てに通販のカタログが送られて来ることを考えると、何年も注文
無くてもチェックはされないようです。

 実に、いい加減なシステムだと思います。

 結論。
 電話とは関係ないのですが、何年も注文の無い人物に同じカタログを2冊も
送って来る業者が『顧客管理』がどうとか言っても説得力ないです。
 お客様番号が違っても、住所も名前も同じなんだからさ。

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