■ とようけ茶屋
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とようけ茶屋 〜闘う老舗〜


とようけ茶屋外観
北野天満宮へ参拝の際にはぜひとも訪れておきたいとようけ茶屋。名物粟餅の老舗、「澤屋(甘味処・和菓子参照)」と並び、天神さん界隈をにぎわす必殺の名コンビだ。
その人気のほどは、天神さんの真ん前にある店の前を通りかかれば一目瞭然。休みの日などは開店後すぐに長蛇の列だ。老舗にもかかわらず若い人の姿が多く見受けられるが、これは昔ながらの仕事をずっと貫きつづけ、変わらぬ人気を博している澤屋とは異なり、長い豆腐づくりの歴史を、しっかり今の時流の上に載せていこうとする商売への姿勢が功を奏したものであろう。その温故知新の精神には、料理の評価こそそれほど高くはないけれども、下の代表的な二つの老舗と相容れるものがある。
「おひるや豆魂(和食・お好み焼参照)」や「豆乳ドーナツ」などで、奴にするか湯に通すくらいしか能のなかった豆腐という食べ物の、真の底力をまざまざと見せつけた「京とうふ藤野」。「都路里(甘味処・和菓子参照)」によって、珈琲や紅茶に取って代わられた日本茶の復活に大きく貢献した「宇治茶の辻利」。

・・・・・・いやむしろ、澤屋のような例の方が稀なのである。時代の変化にうとく、守るばかりの店はいつか淘汰されていくのが世の摂理というものだ。かつて着物の老舗がびっしり軒を連ねていたという、西陣の町並みの今を見てみるがいい。そこには、気軽で、経済的で、実用性に富んだ舶来の文化に、なんら打つ手を講じ得なかった保守的な面々の残骸がある。いや、その残骸すらもすでに風化して、すでに跡形もないというみじめさだ。これこそは、無駄な自負によって自らを破滅させた、カンチガイの典型ではないだろうか。
無駄な自負とは、ちょっと古い家を継いだくらいで、みずからを伝統文化の担い人だと位置づけてしまう、狭い狭い考え方のことだ。都路里の項でも述べたが、一部の限られた社会、一部の選ばれし人間だけが古き良き文化を守っていくなどとは、思い上がりもはなはだしいと言わねばならない。なぜなら、大衆の胸に息づくものだけが文化と呼ぶに値するのである。腕のいい職人が意匠を凝らした織物を織りつづけているからと言って、安心している場合ではあるまい。いつまでも高い値段設定で、限られた顧客だけを相手にしていられるほど、追いつめられている現状に気づいていないのであればかなりの阿呆である。第一、それを実際に身につけるのは誰なんだ??
また、京都は学生の多い街であるのにもかかわらず、南座で興行される歌舞伎や舞台は全く学割を設けようともしないのはなぜだろう?言っては悪いが、老い先短い年寄りから大枚をふんだくって、良い目を見られるのは今のうちだけである。見栄社会において金をばらまく風流を知る粋人も、どんどん減っていくだろう。そもそも、行く末を長く展望する上で、暇が有り余っている若い学生たちの胸に古き良き文化の芽を植えつけておかないで、いったい、大衆の中ではとうに自己満足な骨董品程度の価値となりさがった歌舞伎の将来を、どのように発展させていこうというのか。わたしなら、年寄りの三分の一しか売り上げがなくても、どんどん若い人に門戸を開き、長いスタンスでの歌舞伎界の発展を望むだろう。どうやら閉鎖的なあの社会には、そんな単純な計算すらもできない人間しか存在しないらしい。

ここで最初の話に立ち戻るが、今は抹茶や豆腐がブームだから、それらを扱う店がもてはやされているのではない。西洋の文化に圧迫され続け、古い棚がどんどん店をたたんでいく中で、一部の良識ある老舗たちが、かつての誇りや経歴をもなげうち、こぞって反骨精神をむきだしにしたその成果が、今の抹茶や豆腐のブームをもたらしたのである。その意味で、辻利や藤野の例に漏れず、このとようけ茶屋の「山本」も大いに評価されてよいとわたしは考える。

さらにこの店の評価を高めるのが、割高な豆腐料理ではなかなか難しい、捨て身の値段設定だ。
湯豆腐膳、奴(やっこ)膳がたったの1000円で味わえるというのだから、若い人が集まるのも納得できるだろう。そこいらの観光地で湯豆腐を食べれば、最低でも2500円は覚悟しておかなければならない。しかも、2000円台、3000円台で食べられる湯豆腐など、ピンキリで言うなら「キリ」の料理である。形ばかりのコースを、まずい天ぷらや和え物などの小鉢でごまかされるのがオチだ。中途半端な懐石まがいをつかまされるくらいなら、このとようけ茶屋の1000円の料理をぜひとも味わって欲しい。いわゆる定食形式だが、一人分にはちょうどよい量だし、皿の数も多くて贅沢感があるし、なによりうまいのだ。豆腐そのものは、わたしがかつて食べたものの中で最高とまではいかないけれども、値段との釣り合いという点ではじゅうぶん価値のある一品である。豆腐の種類を選択可能なのも嬉しいこころづかいだ。漬け物もよし、和え物もよし。
そうしてとどめは、天下無双のひろうすだ。単品では300円。膳ものを頼めばあらかじめついてくる。1Fの豆腐屋でも売っているから、食事をしない人もぜひ求めていただきたい。具のボリュームと調和、そしてあの「じわわわ〜〜」と染み出してくるおつゆの味。おそらく、豆腐そのものよりも評価されるべき珠玉の一品である。スーパーで売っているものだと、わたしはいつも銀杏を食べずに捨ててしまうが、ここのひろうすの場合はなぜか平気だった。少々くせのある物も、それをさほど感じさせないまでに全体が調和しているしるしである。

★★★★★★★★★
ボリューム
★★★★★★★★★
雰囲気
★★★★★
サービス
★★★
料金
★★★★★★★★★★
総合
36点
交通
★★★★★
管理人
利用率
★★★★★★★★
→Yahooグルメ
とようけ茶屋
さて、この店へ行きたいと思っている人は、11時の開店前には必ず店の前へ着けるように工夫しよう。食事そのものに時間をかけるのは贅沢でよいが、そこにありつけるまでに無駄な時を費やすのは、特に、限られた時間しか持たない旅行客にとっては大きな痛手だろう。サービスの評価を大きくマイナスしたのも、並ぶことがこの店の唯一最大の欠点だからである。一応午後3時までの営業となってはいるが、売り切れ御免の閉店もあるから気をつけて欲しい。週末を避けるのも手だ(木曜日定休)。
店の雰囲気はいたってふつうの「食堂」である(日本語になってないが)。地元の人間ならば気にならないかもしれないが、せめて和風で統一するかして、もうすこし観光客への配慮があるとよかったかもしれない。壁や床にもセンスが感じられれば、たった1000円の料理にもっともっと箔がついたはずである。・・・・・・というわけで、雰囲気の評価はどうにか許容できるという程度。
その他もろもろのことについては、「澤屋」の記事をあわせて参考にしていただきたいが、市のある日、または梅の時季が最高だろう。朝一番にとようけ茶屋を攻め、確か天神さんの梅園には毎年春、わたしの大好きな和菓子の老舗「老松」が入るはずなので(←店を間違えていたらご指摘願います)、梅を眺めながら和菓子をつまんで茶をすすることもできる。で、最後に「澤屋」で粟餅をみやげに・・・・・・。ほうら、想像しただけでよだれが出てくるではないか!
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