■ 阿古屋茶屋
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阿古屋茶屋 〜髄まで粥を食べ尽す〜


阿古屋茶屋外観
二年坂にある阿古屋茶屋は、1200円のお茶漬けバイキングで名を馳せる店だ。清水さんから八坂さんへ、八坂さんから清水さんへと、店舗の場所はゆき交う観光客の姿が途絶えることのない好位置を占め、連休の飯時などにはしばしば長蛇の列ができるようだ。その多くはガイドブック等であらかじめ下調べをしていた旅行者に違いないが、わたしもかねて名前だけは知っていたこの店に行き、彼らに混じってちょっとした旅気分を味わってみたくなった。いかな食べ放題と言え、果してお茶漬けに1200円も払う価値があるのかどうか――それをじっくり検分してみようという下心を抱きながら。

門構えからして、麗しの古都になみなみならぬ憧れを抱いている観光客の目を強く惹きつけるたたずまいである。これが「ワビサビ」の興趣と呼ぶにふさわしいのかどうか、京都の観光地を歩き慣れたわたしにはすこぶる疑問だけれども、なるほどいかにもそれらしくはつくられているようだ。しかし、いったん脚を踏み入れたが最後、ボロはすぐに出てしまう。和風の外観にだまされて、嵐山や南禅寺界隈の観光客向けの店に釣られてしまい、外と内とのギャップにため息をついた経験をもつ旅行者なら、身にしみてわかっていることだろう。阿古屋茶屋は、そんな観光地にある店の典型だ。店内の趣は、そこいらの食堂と大きな違いはない。

席につくとまず、お盆の上に冷奴とみそ汁が載ってきた。
普通の人は、ここですぐに飯やおかずを取りに行く。しかし、「バイキング」と聞いてただ黙々と店のシステムに服従しているばかりのわたしではない。持ち前の貧乏根性で、すかさず冷奴とみそ汁はおかわりできるのかどうかを店員にただした。すると案の定、「冷奴はおひとりに一つだけです」と言われてしまったのだが、意外だったのは、みそ汁までもがおかわり不可という事実。
この店は、初めから「お茶漬けバイキング」を謳っており、お茶漬け以外のものが食べ放題でなくたって、なんら問題はない。しかし、今回の出費は1200円という大金だ。河原町「きあっそ(洋食・パン参照)」のランチなら、「量の多いスパゲティ+食べ放題のパン+飲み放題の珈琲+取り放題のサラダバー+デザート」でようやく達する料金である。それなのに、みそ汁すらおかわりできないなどとは、どうにも納得できかねる。観光地の恐ろしさと言われてしまえばそれまでだが、この時の思いを率直な言葉にあらわすと、「みそ汁など何十杯も飲む人はあるまいになにをケチってやがる?」だった。

肝心の漬け物や佃煮のお味については、多くの言葉を費やす必要はない。
すべて「ごくごくフツー」の一言に尽きるのだ。格別の感動もなければ、まずいという代物でもない。家庭でいつも味わっている、そのままの味なのである。ただ、20種以上から選べるので、あれこれと迷うのが楽しく、なかには京野菜なども混じっているようだから、観光客にとっては珍しい一品も見つかるかもしれないという程度。ご飯は白米とお粥が選択でき、こちらはなかなか美味しいので、たくさんおかわりをしたくなるけれども、いかんせん目玉の「香の物」がご飯をたくさん頬ばらせるほどの力に欠けるので、男性でも三杯、四杯は厳しいだろう。モトを取りにくいバイキングと言えるかもしれない。

さて、この店に対しては初めから批判的な書き方をしてきたが、その理由をそろそろ述べなければなるまい。
なんと言ってもムカつくのが、食べ終わったあとに、店員が食器を下げるときの尋常じゃない速さ。もう一度おかわりしようかどうか迷っている暇などない。威圧的な「お下げします」の言葉と同時に、さっさと片づけられてしまう。やはりここは料理屋ならぬ、観光地の食堂である。そして店員はみな、ひたすら無表情に動くロボット。そこからは、お客さまに贅沢なひとときを十分に満喫していただこうという、サービス業の住人ならば当然持っていなければならないはずの意気など、とうてい感じられるはずもなかった。

★★★★★★
ボリューム
★★★★★★★★☆☆
雰囲気
★★★★★★
サービス
★★★★
料金
★★★★★★
総合
30点
交通
★★★★★★★★★
管理人
利用率
★★★★★★★★
→Yahooグルメ
阿古屋茶屋
ここまで嫌な思いをさせられても、しかしわたしは、この店に対し100%批判的な姿勢ではいられない。悔しいかな、この店にはひとつだけキラリと光る点があるのだ。出来合いの蕎麦の上に輸入物のニシンをのせて、「京都名物ニシンそば1200円」とでもして看板に出しておけば、一見さんの多い観光地においてはそこそこの集客は望めるはずなのに、同じ料金であえて「お茶漬けバイキング」というアイデア勝負に出たのはなかなか心憎いと言わねばなるまい。観光客も、地元に帰って「京都でお茶漬け食べ放題の店に行って来たよ!」と言えば、大いに話の種になるだろう。こういう試みは大正解なのである。
同じような食堂ばかりが軒を連ねる嵐山あたりでも、このような異色の方策で個々の店が差別化を計るとおもしろいと思う。大人はまだいい。修学旅行生が、くだらない食堂で京都の観光地では絶対食べてはいけない蕎麦なんぞを、高額の料金を支払って食べている様を見るにつけ、わたしは不憫の涙を禁じ得ないのである(大袈裟)。
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