■ 横綱
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横綱 〜屋台の味を忘れない〜

その昔おおいにハマった店に、久々に行って裏切られた、「新福菜館(中華・ラーメン参照)」のような例もあれば、昔は大嫌いだった味がふとした拍子に好きになるということもある。ラーメンチェーン横綱は、まさに後者の適例だ。
わたしが京都へ来て初めて挑戦した横綱は、某大学前の支店だった。そこは深みのあるこってりスープというよりは、ただ濃いだけのどうにもいただけないスープで、入れ放題のネギを山盛りに盛っても、テーブル備えつけの「特製ニントン(ニンニク唐辛子)」を入れても、とてもとても食えた代物ではなかった。ごまかしのきかないほど、最悪の味だったのである。それはそう、関西の人間が関東のうどんの醤油たっぷりスープを、「辛くて、ダシの味がしなくて、とても飲めやしない!」とののしる、ちょうどあのキモチと似ていたかもしれない。
これはわたしひとりに限った話だったのかというと、決してそうではない。大阪や、東京や、その他全国から集まってきた大学の仲間たちの間でも、大学前の横綱はすこぶる評判が悪く、「王将やマクドのほうがまだマシ」というのが通説にもなっていて、数千という人間が毎日出入りする大学の真ん前という地の利がありながら、昼飯時に学生の入っていく姿がほとんど認められなかったのもこの店舗である。以来わたしは、胸の中で「横綱=最低のラーメン屋」という動かしがたい格づけをし、どの店舗にも一切近寄ろうとはせず、大学の中でも横綱を信奉する少数派の人たちを、哀れむようなキモチで眺めたものだった。

ところがだ。つい最近、わたしは、古くから横綱に通っているという地元の人間の口から、こんな異聞を耳にした。――「○×大学前の横綱は横綱じゃない!」
なるほど、よくある話である。本店の味と支店の味が、詐欺と言っても過言でないほどかけ離れている場合・・・・・・。この言葉によって、わたしは全面的に気乗りしたわけではなかったが、ペイジで取り上げたい気もちも手伝って、ともかくも7年ぶりに派手な黄色い看板の店へ足を踏み入れることになったのだった。

横綱本店の場所は吉祥院。観光客は言うまでもないが、地元の人間でも車なしではなかなか行きにくい、はるか南方の土地だ。
「天下一品」「新福菜館」「第一旭」等の、列のできるほど人気の本店とくらべると、やはりこちらは、一見してかなり見劣りする。それが証拠に、週末の夕飯どきに行ったのにもかかわらず、並ぶどころか空席さえ見出すことができた。もっとも、店そのものがそこそこ広いことと、運送業の人などが仕事中に訪れることも多いようだから、カウンターを利用してさほど長居をせずに引き上げる場合も多いと推測される。つまりだ、他の人気チェーンの本店のように、「たかばしの本店へ行こう!」とか、「北白川の本店で並んででも食べたい!」とか、そういった気合いの入った客よりも、車を運転中にラーメンが食べたくなり、たまたま見つけて入ったのが「なんだ、ここの横綱って本店だったのか」とあとから気づくといった具合である。実際、支店となんら変わるところのない派手な看板や店構えからは、とてもとても本店とは見極めがたいのだ。

さて、問題のラーメン。はじめに種明かしをしてしまうと、横綱に対するわたしの7年越しの「失格」の烙印が、最初のスープ一口で完全に吹き飛んでしまった事実をあげれば、これから話す筋書きはおおよそ察しがつこう。ガイドブックや雑誌で常連の、天一・新福・第一旭本店にくらべ、話題性や知名度では格段に劣る横綱本店が、四者の中でもっともわたしの舌を驚かせたことは皮肉な事実と言わねばならないが、ここのスープは、系統こそまったく異なるけれども、あの京都随一と誉れ高い「ますたに(中華・ラーメン参照)」のスープに匹敵するほどのコクと深みをそなえた傑作だ。わたしが嫌悪しつづけてきた支店のスープとは、似ても似つかぬ代物である。麺との調和もしっかりとれていて、ますたにのラーメンのごとく、麺を口へ運ぶ途中にスープの旨味がすべて削げ落ちてしまうようなこともない。これはもはや、チェーン店のみの比較にとどまらず、わたしが京都で食したラーメンの中でも最も高い評価を与えるべき逸品のひとつと言って差し支え ない。

★★★★★★★★★
ボリューム
★★★★★★★★
雰囲気
★★★★★★★
サービス
★★★★★★★★
料金
★★★★★★★
総合
39点
交通
★★
管理人
利用率
★★★★★
また、名物ピリ辛餃子と、ラーメンに入れるニントン(ニンニク+唐辛子)についても触れておこう。
餃子については、「紅虎餃子房(中華・ラーメン参照)」の鉄鍋餃子同様、わざわざ辛い味つけにする意味が理解できない。野菜のウマ味は?肉のウマ味は?――そんなもの、辛さによってすべて覆い隠されてしまうだろう。極端な話、ここまできたなら、いっそ中身を白菜キムチにでもしたらどうだろう。
ニントンがまたくせものである。こちらもせっかくのスープのウマ味を消し、辛さでごまかすための道具である。まずい支店なら利用価値もあるだろうが、本店では一切必要ない。どうしても入れたいなら、小さじ5分の一程度で我慢すべきである。わたしはいろいろ試してみたが、小さじ一杯も入れてしまうと、完全にスープのウマ味は消えてしまうようだ。特に、ニンニク好きは騙されないよう、気をつけてほしい。

「横綱のラーメンは好き嫌いのはっきり分かれる味である」――これはすでに通説だ。ともすれば、もっと個性のキツイ「天下一品」より許容範囲が狭いととられがちである。しかし、今回の経験により、そう受け止められてしまう理由の中には、「まずい支店によって足をひっぱられる本店の悲劇」という事実がすくなからぬ部分を占めているであろうことがはっきりとわかった。ただしこれは店側の怠慢であって、客は一切同情を寄せるような必要はない。まずい支店に当たってしまった客は、はっきり「横綱はまずい!」と言って当然であり、そこには本店がどうの、味の違いがどうのなどという言い訳がましい弁解の入り込む余地はない。そうだ、かつてのわたしの思いと同じように・・・・・・。
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