ちかごろ雑誌の焼肉特集で、必ずと言っていいほど顔を見せている韓国料理店、チファジャ。
2980円で食べ放題だから、
値段が飛び抜けて安いわけでもないのに、なんでこんなによく見かけるんだろう?と前々から気になっていた店だ。よっぽどうまい肉がでてくるか、肉以外にもいろいろ頼める楽しさがあるのか。入店する前からいろいろと想像は尽きなかったが、いずれにしろ、相当の期待に胸をふくらませての挑戦となった。場所は河原町三条上ル西側の、なんとかビルの8F。河原町通りに面しているので、しっかり看板をさがして歩けば見つかるだろう。
その日は土曜日の夜。しかも関西ウォーカーで紹介されて間もない時だったから、かなりの混雑が予想されたが、店に入ると案の定、「1時間待ちです」との店員の答えがかえってきた。わたしはしおしおになってあきらめかけたが、店員の話をよく聞いてみると、どうやら1時間店の前で待っていろということではないらしい。というのも、この店の「待ち」システムとは、
完全予約制だったのだ。つまり1時間後に予約をとって、どこへなと表へ出て時間をつぶして帰ってくれば、しっかり席が用意されているということ――カラオケ屋によくあるあのシステムだ。
「偉い!」――わたしは思わずさけばずにはいられなかった。だってそうだろう。店の前で無駄な時を過ごすのも、外で楽しい暇つぶしにふけるのも、同じ1時間だ。だったら予約制にしてくれたほうが、よっぽど客へのサービスが評価できるというものである。なにしろ、あっちこっちの雑誌で名を売っておいて、いざ客が行ってみようとなったとき、「もうしわけありません、ただいま大変混雑しておりまして・・・・・・」というお決まりの文句で断わられるほど
屈辱的なことはない。大勢の客を受け入れるだけのキャパもないのに、大々的に宣伝をしておいて、せっかく来てくれた客をただずらりと棒立ちに並ばせておくだけの能しかないような店はいくらでもあるものだ。そういう店には、
「もすこし頭使えよ!」と捨てぜりふを残して去るのが一番なのだが、このチファジャのように、ちょっと発想を変えてみるだけで客への印象は大きくちがってくるのがわかるだろう。もちろん、チファジャの場合は食べ放題を求める客が多く、90分の時間制限が
あるから、いま席についている客が帰る時間をだいたい計算できるという利はある。しかし、祇園で人気のあの抹茶菓子の店や、岡崎の某スフレ専門店に対してわたしが提案したいのは、客一人あたりのティータイムを時間制にするなりすれば、この完全予約制もしっかり機能させられるだろうということだ。後者などは特に、
1時間も客を待たしていいほどの価値がある店ではないのだから。
さて、そろそろチファジャの料理について語らなければならない。
まず最初に突っ込んでおきたいのは、予約制のシステムでは賛辞を得たこの店も、肝心の食べ放題のシステムにはちょいと問題がある、ということだ。わたしが食べ放題の焼肉店へ行くとき、
絶対にゆずれない(あるいは許せない)システムを、この店は採用している。最初の注文を店側にゆだねなければならず、それを全部平らげて初めて好きなもの注文できるという、あの
悪夢のシステムのことだ。「ごみ箱」にアクセスしたことがある人なら、わたしが以前、西院の某焼肉店において詐欺まがいの食べ放題にひっかかり、さんざんな目にあったことはご存じだろう。てんこもりの鶏肉と豚肉の間に、和紙のように薄っぺらい牛肉が3、4枚・・・・・・あのときのいや〜な想い出が頭をよぎり、さっと血の気がひいた。しかも今回は3000円近くの出費だ。これは大きい。
だが、さすがに競争の激しい河原町に店を構えるチファジャ、すべての懸念はいらぬ心配で終わった。出てきたのは、タン塩、ロース、骨付きカルビ、バラ、サラダ、キムチ、焼き野菜などなど、どれもこちらから注文したいようなものばかり――それでわたしも、ようやく安心して肉のうま味を味わうことができたわけである。しかし、問題はやはり問題としてここで取り上げるべきだろう。つまり、「食べ放題」という言葉には
「選び放題」のニュアンスも大いに含まれていると思うので、たとえ西院の某店のような悪意はなくても、こういう詐欺とも受け取られかねない料理の提供のしかたは控えるべきなのである。カルビやロースだけを十人前も平らげる客がいたっていいではないか。それを受け入れられないのなら、初めから「食べ放題」を謳うことはやめておくことである。
当然、今回は2980円の食べ放題での評価である。
結論を先に述べると、残念ながら、わたしの抱いていた期待のうち7割がたは裏切られた。値段設定といい、食べ放題といい、わたしはちょくちょく利用している木屋町の「風風亭」と比べずにはいられないが、この二者に甲乙をつけようとするとき、はっきり
チファジャのほうが劣ると言い切れる。肉のうまさだけなら、おそらくチファジャの方が上だろうが、食べ放題に限って言うなら、そんなものは二の次である。なぜなら、これらの店で提供される肉の質の良し悪しなど、しょせん
五十歩百歩なのだ。よっぽどまずくないかぎり、文句の言えた筋合いではない。
高級焼肉店と食べ放題を設けているようなお安いお店との関係は、実は高級江戸前寿司店と回転寿司屋との関係にちかい。高い身銭を切って食うものなら、絶対に美味しくなければならないが、お安い店の場合には、バラエティーにとんだメニューの
面白みを狙っていくこともある。回転寿司屋に行って、ジュースやゼリー、フルーツなどが回っていないと、なんとなく味気なく思われるように、食べ放題の焼肉屋でも、肉ばかりのメニューはつまらないのである。だって、肉そのものが大した代物ではないのだから。だとすれば、おかわりの際、ロースやカルビなどの定番の肉以外にほとんど選択肢のないチファジャより、さまざまな種類の肉を選べ、ユッケやイカも注文でき、さらにサラダ・スープを数種類から選択可能な風風亭のほうが、はるかに食事を楽しめるというものだろう。ただ風風亭の場合は、注文したものがなかなか手元に届かないという難点はあるが。
|
味
|
★★★★★★★ |
|
ボリューム
|
★★★★★★★★★ |
|
雰囲気
|
★★★★★★★★ |
|
サービス
|
★★★★★★★ |
|
料金
|
★★★★★ |
|
総合
|
36点 |
|
交通
|
★★★★★★★★★★ |
|
管理人
利用率
|
★★
|
|
|
店内の雰囲気はのどかでたいへんよい。食べ放題の店はしばしば修羅場と化してしまいがちだが、客にまで忙しさがうるさく感じられることはなく、案外ゆったりとくつろいでの食事ができる。雰囲気を高く評価したのはそのためだ。調度品や装飾などが格別優れているというわけではない。
サービスは例の予約制を高く買った。値段は料理との兼ね合いをふまえると、平均といったところか。しかしどうせ選べるものが少ないなら、キムチやら野菜やらも一切なしにして、肉だけの食べ放題を2000円くらいで始めてはどうかと思う。
最後に。もし、わたしが二十歳のころにこの店を記事にしていたなら、もっともっと高い評価を与えたにちがいない。あのころは、何を置いても肉、肉、肉!というくらいに、肉を食べるときは底なしの胃ぶくろだった。しかし、それから数年を経たいま、肉ばかりを1時間も食べ続けるなど、とうてい困難なワザとなった。魚介類も食べたいし、野菜も食べたいのである。そんなわたしのわがままに、この店は今のところ、こたえてくれそうにない。